【ASML決算】Q2売上93億ユーロ・純利益29億ユーロで通期ガイダンス上方修正——EUV独占企業の強気姿勢
2026年7月15日|ぱぶちゃんのファンダメンタルlab
⏱ 30秒で読む結論
半導体露光装置最大手ASMLのQ2 2026決算は、売上高93.3億ユーロ(前年比+21%)・粗利率54.0%・純利益29.2億ユーロといずれも会社ガイダンスを上回った。会社は2026年通期の売上高ガイダンスを430〜450億ユーロへ上方修正し、AI投資に伴う顧客の設備投資意欲の強さを強調。一方で新規受注のブレやキャッシュフローの変動など、注視すべき点も残る。
📋 目次
1|ASMLとはどんな会社か
ASML Holding NV(Euronext Amsterdam/NASDAQ:ASML)は、オランダ・フェルトホーフェンに本社を置く、半導体製造装置の世界最大手だ。主力製品は半導体チップの回路パターンをシリコンウェハーに転写する「露光装置(リソグラフィ装置)」で、TSMC・Samsung・Intelなど世界の主要ファウンドリ・IDMに納入している。
最大の特徴は、2nm以下の最先端チップ製造に不可欠な「EUV(極端紫外線)露光装置」を世界で唯一製造できる点にある。1台あたり数百億円という超高額機器であり、代替供給元が存在しないという構造的な独占状態が、同社の価格決定力・利益率の高さの源泉となっている。AI半導体ブームの主役はNVIDIAなどのGPUメーカーだが、ASMLはその「さらに上流」に位置する装置サプライヤーとして、AI投資サイクルの恩恵を最も直接的に受ける銘柄の一つに数えられる。
一方で、米国主導の対中輸出規制の影響を強く受ける銘柄でもあり、中国向け売上比率の推移は毎四半期の決算で注目されるポイントとなっている。従業員数は44,500人超(FTE)で、EMEA・米州・アジアに拠点を展開する。
2|主要財務ハイライト
オランダ時間2026年7月15日、ASMLは2026年第2四半期(4〜6月期)決算を発表した。売上高・粗利率・純利益のいずれも自社ガイダンスの上限付近、もしくはそれを上回る水準で着地した。
| 指標 | Q2 2026 | Q1 2026 | Q2 2025 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 総売上高 | 93.3億€ | 87.7億€ | 76.9億€ | +21.3% |
| 粗利率 | 54.0% | 53.0% | 53.7% | +0.3pt |
| 営業利益 | 34.6億€ | 31.6億€ | 26.6億€ | +29.7% |
| 営業利益率 | 37.1% | 36.0% | 34.6% | +2.5pt |
| 純利益 | 29.2億€ | 27.6億€ | 22.9億€ | +27.4% |
| EPS(基本的1株当たり利益) | €7.59 | €7.15 | €5.90 | +28.6% |
上半期(H1 2026)累計では、総売上高180.9億€(前年同期比+17.2%)、純利益56.7億€(同+22.2%)となった。クリストフ・フォケCEOは「Q2の総売上高93億€・粗利率54.0%はいずれもガイダンスを上回った。主な要因はIBM(サービス・フィールドオプション)売上が想定以上に強かったことだ」と説明している。
3|売上構成:システム売上とIBM(サービス)売上
ASMLの売上は大きく「新規システム販売」と「IBM(Installed Base Management=既存装置の保守・アップグレード・部品供給などのサービス売上)」の2つで構成される。
| 区分 | Q2 2026 | Q2 2025 | 前年同期比 | 売上構成比 |
|---|---|---|---|---|
| システム売上 | 65.6億€ | 56.0億€ | +17.3% | 70% |
| IBM(サービス)売上 | 27.6億€ | 21.0億€ | +31.8% | 30% |
今回はIBM(サービス)売上の伸び率(+31.8%)がシステム売上の伸び率(+17.3%)を上回った点が特徴的だ。サービス売上は装置の稼働率上昇やアップグレード需要と連動する傾向があり、既存の設置ベース(顧客が保有するASML装置全体)がフル稼働に近い状態で使われていることを示唆する。ストック型で粗利率も相対的に安定しやすいサービス収益の比率上昇は、収益の質という観点でもポジティブな材料といえる。
4|四半期推移
| 四半期 | 総売上高 | 粗利率 | 純利益 | リソグラフィ出荷台数 |
|---|---|---|---|---|
| Q2 2025 | 76.9億€ | 53.7% | 22.9億€ | 76台 |
| Q3 2025 | 75.2億€ | 51.6% | 21.2億€ | 72台 |
| Q4 2025 | 97.2億€ | 52.2% | 28.4億€ | 102台 |
| Q1 2026 | 87.7億€ | 53.0% | 27.6億€ | 79台 |
| Q2 2026(今回) | 93.3億€ | 54.0% | 29.2億€ | 91台 |
※ リソグラフィ出荷台数はメトロロジー・検査装置を除く。
売上高は四半期ごとにばらつきがあるものの、粗利率は52%台から54%台へと緩やかな改善トレンドを描いている。Q4に出荷台数・売上が跳ねるのはASML特有の季節性(年末に向けた出荷集中)で、Q2 2026の91台という水準はQ4には及ばないが、直近では底堅い出荷ペースを維持している。
5|出荷台数と生産能力増強計画
Q2 2026のリソグラフィ装置出荷は新規86台・中古5台の合計91台(メトロロジー・検査装置を除く)。会社側は決算資料で、AI関連投資とAI技術の進展がロジック・メモリ双方の先端チップ需要を押し上げ、半導体業界全体の成長見通しを強めていると説明している。
特に注目すべきは、今回発表された生産能力の増強計画だ。
📋 2027・2028年の生産能力増強方針
| Low NA EUV(2026年生産能力) | 年間約65台 → 2027年に+30%増設予定、2028年にさらに+30%を検討中 |
| DUV immersion(2026年生産能力) | 年間約130台 → 2027年に+30%増設予定、2028年にさらに+30%を検討中 |
会社は「上半期を通じて受注が非常に強く、顧客からの製品ポートフォリオ全体にわたるコミットメントが増え、より長期的な需要への視界が広がっている」とコメントしている。決算説明会でもフォケCEOは、2027年分のEUV増産枠についてはほぼ受注を確保できている状況にあり、2028年分についても既に多くの受注を獲得済みだと説明した。増設計画そのものは投資的なメッセージであり、確定した受注額ではない点には留意したいが、装置の唯一無二の供給者であるASMLが自ら増産方針を打ち出したこと自体が、業界の需要観の強さを裏付けている。
6|バランスシート・キャッシュフローの変化
損益面は好調だった一方、バランスシートとキャッシュフローには目を引く変化があった。
| 項目 | 2026年6月28日 | 2025年12月31日 |
|---|---|---|
| 現金及び現金同等物 | 66.7億€ | 129.2億€ |
| 売掛金(純額) | 72.5億€ | 30.2億€ |
| 株主資本 | 218.3億€(総資産比43.5%) | 196.1億€(総資産比38.8%) |
| 総資産 | 502.1億€ | 505.7億€ |
現金及び現金同等物は年初の129.2億€から66.7億€へと大きく減少した一方、売掛金は30.2億€から72.5億€へと倍増以上に膨らんだ。これは主に、Q2の強い出荷・請求に対して顧客からの入金がまだ完了していないタイミングのズレによるものと考えられる。実際、H1 2026累計の営業キャッシュフローは▲4.8億€(前年同期は+6.9億€)とマイナスに転じており、四半期別ではQ1が▲21.9億€、Q2が+17.0億€と、Q2にかけて回復する動きを見せている。
損益上は好調でも、キャッシュフローが一時的にタイトになっている点は、決算内容全体を評価するうえで見落とせないポイントだ。ただし、これは受注・出荷が先行し請求サイクルが後追いする構造的な特性によるところが大きく、直ちに財務健全性への懸念材料と捉えるべきものではない。株主資本比率は43.5%とむしろ年初から上昇しており、財務基盤自体は引き続き強固だ。
7|株主還元:自社株買いと配当
Q2中、ASMLは2026〜2028年自社株買いプログラムのもとで約11.0億€相当の自社株を取得した。加えて、2026年度の中間配当として1株当たり1.88€の支払いを2026年8月5日に予定している。
配当は前四半期からの増額(H1 2026累計配当支払額16.6億€、前年同期13.1億€)となっており、業績拡大に応じた株主還元姿勢が継続していることがうかがえる。
8|Q3・通期2026ガイダンス
| 指標 | Q3 2026ガイダンス | 2026年通期ガイダンス(上方修正後) |
|---|---|---|
| 総売上高 | 110〜120億€ | 430〜450億€ |
| 粗利率 | 55〜57% | 54〜56% |
| R&D費用/SG&A費用 | 約12億€/約4億€ | — |
会社はプレスリリースで「2026年通期の総売上高ガイダンスを430〜450億€、粗利率を54〜56%に引き上げる」と明言しており、タイトルにも「ASML increases outlook」と掲げるなど、上方修正を前面に打ち出す内容となった。Q3ガイダンスの粗利率55〜57%はQ2実績(54.0%)からさらに一段の改善を見込む水準だ。
なお、次回の投資家向けCapital Markets Dayは2027年6月10日に開催予定で、その場で市場・技術動向を踏まえた中長期見通しが改めて示される予定となっている。
9|注視すべきポイント
⚠️ 決算資料から読み取れる留意点
① H1累計の営業キャッシュフローがマイナス転化(売掛金急増による一時的なタイミングのズレ)
② 現金及び現金同等物が年初比で約半減(自社株買い・配当・短期投資への振替も影響)
③ 生産能力増強(2027年+30%)は投資計画であり、確定受注そのものではない
④ 中国売上比率は地域別総売上高ベースで29.1%(Q2 2026)。ダッセンCFOは通期では中国比率が約20%程度で推移する見通しを改めて示しており、対中輸出規制の帰趨は引き続き注視が必要
総じて、損益面は「ガイダンス超え+通期上方修正」という明確な強気シグナルを示した決算だった。一方でキャッシュフロー・売掛金の動きはワンタイムの要因が大きいとみられるものの、次四半期以降の回収状況は確認しておきたいポイントだ。
出典
- ASML「Financial Statements US GAAP Q2 2026」(2026年7月15日)
- ASML「Press Release Financial Results Q2 2026」(2026年7月15日)
✍️ 執筆者/ぱぶちゃん|投資歴6年/ぱぶちゃんのファンダメンタルlabを事実ベースで解説するブログを運営中。相場の「なぜ?」を一緒に考えましょう。ナンピンは得意です。/X(旧Twitter):@pablo29god
© 2026 ぱぶちゃんのファンダメンタルlab

