【TSMC決算】売上高402億ドル・粗利率67.7%でガイダンス上振れ——2nm量産本格化とVIS株売却益が押し上げた最高益
2026年7月16日|ぱぶちゃんのファンダメンタルlab
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世界最大のファウンドリTSMCの2026年第2四半期決算は、売上高402.0億ドル(前年比+33.7%)・粗利率67.7%・純利益7,065.6億元(前年比+77.4%)といずれも自社ガイダンスを上回った。HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)需要とN2(2nm)量産の立ち上がりが牽引した一方、純利益の伸びにはVanguard International Semiconductor(VIS)株売却益(632億元)という一時要因も相応に寄与している。3Q26ガイダンスも一段の増収増益を見込む強気の内容となった。
📋 目次
1|TSMCとはどんな会社か
台湾積体電路製造(TSMC、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)は、1987年に世界で初めて「ファウンドリ専業(他社ブランドの半導体を受託製造する)」というビジネスモデルを確立し、以来その世界最大手であり続けている企業だ。本社は台湾・新竹(Hsinchu)に置き、台湾を中心にアジア・欧州・北米にわたってグローバルに生産拠点を展開している。
TSMC自身は自社ブランドのチップを持たず、Apple・NVIDIA・AMD・Qualcommなど世界中のファブレス半導体メーカーから製造を請け負う「縁の下の力持ち」的な存在だ。2025年実績では305種類の異なるプロセス技術を用い、534社の顧客向けに12,682種類の製品を製造している。
最大の強みは、2nm・3nmといった最先端プロセスにおける圧倒的な技術優位性とシェアだ。AI半導体ブームの主役であるNVIDIAのGPUやApple SiliconなどはすべてTSMCの工場で製造されており、「AI投資の恩恵を最も直接的に受ける企業」の筆頭格として市場から注目されている。一方で、地政学リスク(台湾有事懸念)や米中対立に伴う輸出規制、海外拠点(米国・日本など)拡張に伴うコスト増(粗利率の希薄化要因)は、同社決算を見るうえで継続的に意識すべき論点となっている。
2|主要財務ハイライト
台湾時間2026年7月16日、TSMCは2026年第2四半期(4〜6月期)決算を発表した。売上高・粗利率・営業利益率のいずれも自社ガイダンスを上回るか上限付近で着地した。
| 指標 | 2Q26 | 1Q26 | 2Q25 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高(USD) | 402.0億ドル | 359.0億ドル | 300.7億ドル | +33.7% |
| 売上高(NTD) | 1兆2,703.8億元 | 1兆1,341.0億元 | 9,337.9億元 | +36.0% |
| 粗利率 | 67.7% | 66.2% | 58.6% | +9.1pt |
| 営業利益率 | 60.3% | 58.1% | 49.6% | +10.7pt |
| 純利益(親会社帰属) | 7,065.6億元 | 5,724.8億元 | 3,982.7億元 | +77.4% |
| 純利益率 | 55.6% | 50.5% | 42.7% | +12.9pt |
| EPS(希薄化後) | 27.25元 | 22.08元 | 15.36元 | +77.4% |
| ROE(年率換算) | 45.9% | 40.5% | 34.8% | +11.1pt |
ガイダンス対比では、売上高39.0〜40.2億ドルに対し40.20億ドル(上限並み)、粗利率65.5〜67.5%に対し67.7%(上限超え)、営業利益率56.5〜58.5%に対し60.3%(上限を大きく超過)と、いずれも会社計画を上回る強い着地となった。ウェンデル・ホアンCFOは「2Q26の業績は先端プロセス技術への強い需要に支えられた」とコメントしている。
※参考(日本円換算):2026年7月15日時点の実勢レート(USD/JPY≈162.1円、NTD/JPY≈5.13円で算出)で概算すると、2Q26売上高はUSD建てで約6兆5,164億円、NTD建てで約6兆5,166億円相当となり、いずれの通貨で換算してもほぼ同水準に収まる。為替は日々変動するため、あくまで規模感をつかむための参考値として捉えてほしい。
3|売上構成:技術別・プラットフォーム別・地域別
技術別のウェハー売上構成比は以下の通り。7nm以下の先端技術が売上全体の77%を占め、2nmは立ち上がったばかりながら既に3%に到達した。
| 技術ノード | 構成比(2Q26) | 2Q26 | 1Q26 | 2Q25 |
|---|---|---|---|---|
| 2nm |
|
3% | 0% | 0% |
| 3nm |
|
30% | 25% | 24% |
| 5nm |
|
33% | 36% | 36% |
| 7nm |
|
11% | 13% | 14% |
※バー幅は2Q26構成比を表す(残り23%は16/20nm・28nm・40/45nm・65nm・90nm-0.13um・≥0.15umなどのレガシーノード)。
プラットフォーム別では、HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)が売上全体の66%を占め首位。QoQでは+20%と大幅増加し、AI需要の強さを裏付けた。一方でスマートフォン向けは22%でQoQ▲4%と減少している。
| プラットフォーム | 構成比(2Q26) | 2Q26 | QoQ増減 |
|---|---|---|---|
| HPC |
|
66% | +20% |
| スマートフォン |
|
22% | ▲4% |
| IoT |
|
5% | +4% |
| 自動車 |
|
4% | +15% |
| DCE/その他 |
|
1%/2% | +5%/+5% |
地域別(顧客本社所在地ベース)では、北米が78%(1Q26は76%)と過半を大きく超える構成を維持。中国は7%から6%へとやや低下しており、地域集中度は北米シフトが続いている。
4|四半期推移
| 四半期 | 売上高(NTD) | 粗利率 | 営業利益率 | フリーキャッシュフロー |
|---|---|---|---|---|
| 2Q25 | 9,337.9億元 | 58.6% | 49.6% | 1,998.5億元 |
| 3Q25 | 開示なし | 開示なし | 開示なし | 1,393.8億元 |
| 4Q25 | 開示なし | 開示なし | 開示なし | 3,686.0億元 |
| 1Q26 | 1兆1,341.0億元 | 66.2% | 58.1% | 3,482.1億元 |
| 2Q26(今回) | 1兆2,703.8億元 | 67.7% | 60.3% | 2,873.6億元 |
売上・利益率は右肩上がりの改善トレンドが続く一方、フリーキャッシュフローは1Q26の3,482.1億元から2Q26は2,873.6億元へと減少に転じた。これはCapEx(設備投資)の急増が主因で、後述する通りN2(2nm)ラインへの投資が本格化していることを反映している。なお3Q25・4Q25の売上高・利益率は決算資料の公表範囲外(フリーキャッシュフロー推移グラフのみ開示)のため「開示なし」としている。
5|出荷・在庫動向
ウェハー出荷は4,336千枚(12インチ換算)でQoQ+3.9%、YoY+16.6%と着実に拡大。一方、在庫回転日数は87日(1Q26比+7日)に伸びており、経営報告書は主因を「N2ランプ(2nm量産立ち上げ)」に伴う在庫積み増しと明記している。
売掛金回転日数も29日(1Q26比+3日)に伸長。急拡大局面特有の運転資本膨張が見て取れるが、会社側はこれを需要減速のシグナルではなく、先端プロセスの生産量拡大に伴う一時的な動きと位置づけている。
この在庫増を裏付けるように、キャッシュフロー計算書ではPP&E(有形固定資産)取得額が1H26累計で8,467.65億元(USDベースで267.99億ドル)に達し、前年同期の2Q25単体(2,972.26億元)から大幅に積み上がっている。R&D費用も731.46億元(QoQ+7.9%)に拡大しており、設備投資・研究開発の両面でN2への経営資源集中が進んでいることがうかがえる。
6|バランスシート・キャッシュフローの変化
損益面は極めて好調だった一方、バランスシート・キャッシュフローにはいくつか注目すべき変化があった。
| 項目 | 2Q26 | 1Q26 |
|---|---|---|
| 現金及び市場性有価証券 | 3兆5,180.1億元 | 3兆3,836.0億元 |
| 純現金準備 | 2兆4,863.3億元 | 2兆3,263.4億元 |
| 総資産 | 9兆3,756.6億元 | 8兆6,609.5億元 |
| 自己資本比率 | 69.1% | 68.5% |
2Q26のキャッシュフローでは、営業キャッシュフローが7,833.6億元に対し、CapEx(設備投資)は4,960.0億元と1Q26の3,507.6億元から約41%急増した。結果としてフリーキャッシュフローは2,873.6億元と前四半期から減少。CapExはUS$ベースで2Q26に157.0億ドル、1H26累計268.0億ドルとなっている。
なお、非営業損益は958.3億元の利益(1Q26は288.3億元)と大きく拡大した。これは主にVanguard International Semiconductor Corp.(VIS)株式8.1%売却(2026年5月15日公表)に伴う処分益・時価評価益632.0億元によるもので、純利益の伸び(QoQ+23.4%)にはこの一時的要因が相応に寄与している点は分けて見ておきたい。実効税率も18.1%(1Q26は16.8%)に上昇しており、未分配留保利益への課税が主因とされている。
7|株主還元・主要イベント
📋 直近の主要イベント
- VIS株8.1%売却(2026/5/15)
- 1Q26分の現金配当NT$7.00を承認。配当落ち日9/16、基準日9/22、支払日10/8(2026/5/12)
- ソニーセミコンダクタソリューションズと次世代イメージセンサーの戦略的パートナーシップで予備合意(2026/5/8)
- 2026北米テクノロジーシンポジウムでA13技術を発表(2026/4/23)
8|3Q26ガイダンス
| 指標 | 3Q26ガイダンス |
|---|---|
| 売上高 | 446.0〜458.0億ドル |
| 粗利率(想定為替1ドル=32元) | 65〜67% |
| 営業利益率(想定為替1ドル=32元) | 56〜58% |
ウェンデル・ホアンCFOは決算発表で「2Q26の業績は先端プロセス技術への強い需要に支えられた。3Q26についても、2nm技術の急速な立ち上げを含む先端プロセスへの継続的な強い需要に支えられる見通し」とコメントしている。売上高ガイダンスの上限458.0億ドルは、2Q26実績(402.0億ドル)からさらに一段の増収を見込む強気の水準だ。
9|注視すべきポイント
⚠️ 決算資料から読み取れる留意点
① 純利益の伸び(QoQ+23.4%)にはVIS株売却益(一時要因、632億元)が相応に寄与しており、営業利益ベースの実力(QoQ+16.3%)と分けて評価する必要がある
② CapExがQoQ+41%と急増し、フリーキャッシュフローは前四半期比で減少
③ 在庫回転日数・売掛金回転日数がともに悪化(N2ランプに伴う一時的要因とされるが、次四半期以降の需要動向を確認したい)
④ 実効税率上昇(未分配留保利益課税)は継続的なコスト要因になりうる
⑤ 3Q26ガイダンスの前提為替(1ドル=32元)は2Q26実績平均(31.60元)より元安方向。想定と実勢が乖離した場合、粗利率に影響しうる
総じて、損益面はガイダンス超えの着地に加え、3Q26も一段の増収増益を見込む強気の内容だった。一方で、純利益の伸びには一時的な株式売却益が含まれる点、CapEx急増に伴うFCF圧縮、在庫・売掛金の積み上がりといった要素は、次四半期以降の推移を継続してウォッチしたい。
出典
- TSMC「2Q26 Earnings Release」(2026年7月16日)|原文PDF
- TSMC「2Q26 Earnings Conference Presentation」(2026年7月16日)|原文PDF
- TSMC「2Q26 Quarterly Management Report」(2026年7月16日)|原文PDF
- TSMC「Consolidated Financial Statements(Unaudited)」(2026年7月16日)|原文PDF
✍️ 執筆者/ぱぶちゃん|投資歴6年/ぱぶちゃんのファンダメンタルlabを事実ベースで解説するブログを運営中。相場の「なぜ?」を一緒に考えましょう。ナンピンは得意です。/X(旧Twitter):@pablo29god
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