- FIA公式発表:F1バーレーン・サウジGPを正式キャンセル(代替なし)。2026年シーズンは24戦→22戦に。
- ドバイWC開催は主催者が堅持するも、日本直行組はほぼ全員回避。現地残留はフォーエバーヤングら6頭のみ。
- MotoGPカタールGPは報道ベースで11月8日案が浮上中。シーズン終盤への3連戦組み込みで数日以内に動きか。FIM/MotoGP公式発表はまだなし。
前回の記事(「中東紛争でF1・競馬危機|レース物流崩壊の構造」2026年3月4日)では、ホルムズ海峡・紅海・湾岸空域が同時に封鎖された「三方ふさがりの構図」を分析し、中東スポーツイベントのロジスティクス上のリスクを指摘した。
あれから11日。FIAが動いた。
今回の続報では、①FIA公式発表でF1問題が「決着」した背景、②ドバイワールドカップ直行組の「回避ドミノ」の全体像と現地6頭の状況、③MotoGP/FIMの公式見解と今後の見通し、の3点を一次情報をベースに整理する。
📋 目次
1. FIA公式発表:F1バーレーン・サウジGP正式キャンセル
2. 「中止をせざるを得ない状況」が意味すること
3. ドバイワールドカップ:直行組「回避ドミノ」の全貌
4. MotoGP:CEOが「困難」認める。FIMの立場は
5. ぱぶちゃんの視点
🏎️ FIA公式発表:F1バーレーン・サウジGP正式キャンセル
F1とFIAは、中国GP(上海)開始前の現地早朝、バーレーンGP(4月10〜12日)とサウジアラビアGP(4月17〜19日)の正式キャンセルを発表した。代替開催なし。2026年シーズンは当初予定の24戦から22戦に縮小される。F2・F3・F1アカデミーの同地ラウンドもあわせてキャンセルとなった。
■ FIA公式声明(X@FIA 投稿 + FIA会長 モハメッド・ベン・スライエム)
FIAは中国GP(上海)開催前の3月14〜15日、公式X(@FIA)でも以下の声明を発表した。
「本日確認されました。慎重な評価の結果、中東地域の現在の状況により、バーレーンGPとサウジアラビアGPは4月には開催されません。複数の代替策が検討されましたが、4月に代替開催は行わないことが決定されました。FIA F2・FIA F3・F1アカデミーのラウンドも予定通りには実施されません。本決定は、F1グループ・現地プロモーター・当該地域のメンバークラブとの全面的な協議のもとで下されました。」
— 原文:@FIA 公式X(ポスト)
FIA会長のベン・スライエムは、この声明に続いて個人としても言及している。
「FIAは常に、我々のコミュニティと同僚の安全・安心を最優先とします。慎重な検討の末、この責任を強く念頭に置いて決定を下しました。地域の安定が一日も早く戻ることを願い、影響を受けたすべての人々に思いを寄せています。バーレーンとサウジアラビアはレースシーズンのエコシステムにとって非常に重要であり、状況が許す限り早期に両国に戻ることを楽しみにしています。」
■ F1CEO ステファノ・ドメニカリ声明
「これは難しい決断でしたが、中東の現在の状況を考えると、残念ながら現時点では正しい決断です。FIAおよびプロモーターの皆さんのサポートと全面的な理解に感謝します。状況が許す限り早く戻れることを楽しみにしています。」
■ 日程上の影響
| ラウンド | 日程 | ステータス |
|---|---|---|
| 第3戦 日本GP(鈴鹿) | 3/27〜29 | ✅ 予定通り |
| 第4戦 バーレーンGP | 4/10〜12 | 🔴 正式キャンセル |
| 第5戦 サウジアラビアGP | 4/17〜19 | 🔴 正式キャンセル |
| 第6戦 マイアミGP | 5/1〜3 | ✅ 次戦(5週間ブランク) |
イモラやポルティマオが代替候補として水面下で検討されていたが、ロジスティクスおよび商業面の課題から断念。「代替なしキャンセル」という異例の判断が下された。
🔍 「中止をせざるを得ない状況」が意味すること
前回記事(3月4日)の時点では、ホルムズ封鎖や空域閉鎖という物流上の問題を中心に状況を整理した。しかし今回のFIAの判断が示しているのは、それよりも根本的なことだ。戦争の長期化が現実のものとなり、終結の見通しが立たないまま、スポーツ主催者が中止をせざるを得ない状況に追い込まれた。
FIAとF1が「代替なし」を選んだことは、単に代替地の手配が困難だったということ以上の意味を持つ。代替日程を組むためには紛争終結の見通しが必要だが、その見通しがない以上、新たな日程を立てること自体が意味をなさないと判断したのだろう。声明の言葉を借りれば「状況が許す限り早期に戻る」——つまり、今は許されていないということだ。
この構図は競馬にも、MotoGPにも共通している。どの競技の主催者も、戦争が短期間で収束することを前提に動けなくなっている。スポーツが「いつ終わるか分からない戦争」と向き合うとき、できることは限られる。
🐴 ドバイワールドカップ:直行組「回避ドミノ」の全貌
■ 開催判断:主催者は「予定通り」を堅持
ドバイ・レーシングクラブは3月10日、The National紙の問い合わせに対し「第30回ドバイワールドカップは2026年3月28日にメイダン競馬場で予定通り開催します。準備は計画通り進んでいます」と公式回答した。メイダンでのレースは連日継続しており、開催意志は現時点では揺るいでいない。
ただし、JRAは3月6日、「万全の発売体制が十分に担保できない」として農林水産大臣への馬券発売認可申請の見送りを発表している。外務省のUAE危険情報レベル「3」(渡航中止勧告)への引き上げ(3月5日)を受けた判断だ。2026年は2020年(COVID中止)以来の馬券販売見送りとなる。
■ 日本直行組:回避ドミノの経緯
前回記事の時点では「3月18日前後に輸送予定」として状況を注視していた日本直行組。その後、外務省の危険レベル引き上げを受け、3月5日から11日にかけて相次いで回避を発表した。
| 発表日 | 馬名 | 予定レース | 次走 |
|---|---|---|---|
| 3月5日 | ウィルソンテソーロ | ドバイワールドC | かしわ記念へ |
| 3月5日 | ウインカーネリアン | アルクォーツスプリント | 高松宮記念へ |
| 3月7日 | マスカレードボール・ジャンタルマンタル(シャダイ) | ドバイシーマC・ドバイターフ | 遠征取りやめ |
| 3月10日 | コスタノヴァ | ゴドルフィンマイル | かしわ記念へ |
| 3月11日 | ダノンデサイル | ドバイシーマクラシック | 大阪杯へ |
■ 現地滞在中の日本馬6頭(サウジ連戦組)
紛争勃発(2月28日)の11日前にリヤドを出発し、ドバイ転戦を済ませていたサウジ連戦組の6頭は、現在も現地で調整を継続している。矢作芳人調教師は3月11日、栗東トレセンで現状を説明した。
「毎日、複数回、現地にいる荒木(助手)と連絡を取り合っています。少なくとも彼らの生活圏、ホテルからの通勤、メイダン競馬場周辺では危険を感じたことはない、と。人々は通常通り生活しているので、何も困ることはないと報告を受けています。なので、自分としては日本のマスコミ報道との距離感にとても困惑しています。6日のメイダン、8日のジュベルアリーも通常通り開催している。当然、ドバイワールドCも通常通り開催される予定なので、そこに予定のレースがある以上、やれることをやるだけ。ただ、前提としては1日でも早く平和になってほしいと願うばかりです」
— 矢作芳人調教師(3月11日、日刊スポーツほか)
| 馬名 | 性齢 | 厩舎 | 出走予定 | 状況 |
|---|---|---|---|---|
| フォーエバーヤング | 牡5 | 矢作芳人(栗東) | ドバイワールドC | ✅ 調教継続中 |
| アメリカンステージ | 牡4 | 矢作芳人(栗東) | ドバイワールドC | ✅ 調教継続中 |
| ケイアイアギト | 牡3 | 加藤征(美浦) | UAEダービー等 | ✅ 調教継続中 |
| シンフォーエバー | 牡4 | 森秀行(栗東) | ドバイワールドC | ✅ 調教継続中 |
| ルクソールカフェ | 牡4 | 堀宣行(美浦) | ゴドルフィンマイル等 | ✅ 調教継続中 |
| ワンダーディーン | 牡3 | 高柳大輔(栗東) | UAEダービー等 | ✅ 調教継続中 |
矢作師のコメントはあくまで「現地スタッフの生活圏・通勤圏・メイダン周辺」という限定的な範囲での報告であり、UAE全体の安全を保証するものではない。中東情勢が完全に落ち着いた状況でないことは変わらず、今後の動向は引き続き注視が必要だ。
欧米陣営も判断が分かれている。昨年の優勝馬ヒットショー(米・Brad Cox厩舎)は3月14日にドバイ向け輸送予定だったが「どうなるか分からない、準備だけはしている」と表明。アイルランドのJoseph O'Brien師ら欧州勢は「直前まで様子を見て判断する」姿勢を崩していない。一方で米国のBook'em Danno陣営(アルクォーツスプリント出走予定)は「ドバイは考えられない」と遠征取りやめを表明するなど、撤退も相次いでいる。
🏍️ MotoGP:CEOが「困難」認める。FIMの立場は
■ MotoGP CEO カルメロ・エスペレータ発言(3月4日・マドリード)
MotoGP Sports Entertainment Group CEOのカルメロ・エスペレータは、3月4日にマドリードで開かれたEstrella Galiciaのイベントで、カタールGPについて初めて公式に問題を認めた。
「落ち着いて。プランBは常にある。待たなければならない。今、カタールに行かないとは言えない。日曜から継続してカタール側と話し合っており、決断を下す予定だ。4月12日にカタールへ行くことは難しいが、今の時点では行かないとも言えない。」
■ 代替開催地は「絶対にない」
エスペレータは代替地への振り替えを明確に否定した。アルゼンチン(テルマス・デ・リオ・オンド)が候補として報道されていたが、「他の場所へ行くのか?絶対にない」と発言。あくまで「延期(同一シーズン内の日程変更)」のみが選択肢であることを示唆した。
「別の日程に戻ることは可能か?心配しないで。カレンダー作りは得意だ。我々は非常に優秀だ。近いうちに何かが分かる。彼らから何かを聞くのを待っている。まだ時間がある。」
■ FIM(国際モーターサイクリズム連盟)の立場
FIM(FIAと提携するモーターサイクル競技統括団体)は、現時点でカタールGPに関する独自の公式声明を発表していない。FIAが今日発表した内容には、MotoGPについての言及はなく、FIM単体の意思決定はエスペレータ発言と照合しながら判断する必要がある。WECのカタール戦がFIA系列として10月24日への延期を正式決定したことが、MotoGPにとっても前例となっている。
■ 延期後の代替日程:motorsport.com報道(3月14日)
motorsport.comの調べでは、MotoGP Sports Entertainment Groupはカタールをシーズン終盤戦へ延期する方向で動いており、今後数日以内に決定される見込みだという。現在検討されている最有力案は以下の通りだ。
| ラウンド | 変更後の日程(案) | 備考 |
|---|---|---|
| オーストラリアGP | 10月25日決勝 | 変更なし |
| マレーシアGP | 11月1日決勝 | 変更なし |
| カタールGP(延期) | 11月8日決勝 | ⚠️ アジア3連戦の3戦目として挿入 |
| ポルトガルGP | 11月22日決勝(1週間後ろ倒し) | ⚠️ 日程変更 |
| 最終戦 バレンシアGP | 11月29日決勝(1週間後ろ倒し) | ⚠️ 日程変更 |
このスケジュールが実現した場合、2027年型プロトタイプによる公式合同テストは11月30日または12月1日に実施される見込みとなる。シーズン閉幕が1週間後ろにずれる形だ。正式決定は数日以内の見通しだが、本稿執筆時点(3月15日)ではまだ確定していない。
💡 ぱぶちゃんの視点
FIAの正式発表を見て、「やはりそうなったか」と思う気持ちと同時に、改めて重く感じることがある。戦争が長期化する可能性が高まり、終わりの見通しが立たなくなったとき、スポーツ主催者にできることは限られる。「代替なし」という判断は、その現実をそのまま反映したものだと思う。
F1は早い段階から「様子見」の姿勢を崩さなかった。バーレーンでは事前テストを2回行い、ピレリの雨天タイヤテストが中止になってもなお、公式には「注視中」という言葉を使い続けた。それが今日、「キャンセル」という言葉に変わった。戦争の長期化という現実の前に、スポーツはただ待つことしかできなかった。
ドバイワールドカップは今も開催を目指している。矢作師のコメントが伝えているのは、日本側で報道されている緊迫感と、現地の実態の間に距離があるという事実だ。「日本のマスコミ報道との距離感に困惑している」という言葉は、現地で実際に状況を見ているスタッフからの報告に基づいている。6頭の日本馬とその関係者たちは、調教を続けながら今も状況を注視している。
日本直行組が相次いで回避を決めたことについて、ぼくのところには「大阪杯が超豪華メンバーになった」という声が届いている。ダノンデサイルをはじめ、ドバイ遠征を取りやめた有力馬たちが国内に戻ってきた結果だ。悲劇的な状況が、皮肉にも国内競馬のビッグレースをとびきり豪華にした。
MotoGPがどう動くか。ドバイWCが本当に3月28日に開催されるか。まだ13日ある。最後まで目を離さずにいたい。
📚 引用・出典
・FIA公式X(@FIA)ポスト(2026年3月14〜15日):https://x.com/fia/status/2032939883136708754
・FIA/F1合同声明「Due to the ongoing situation in the Middle East...」(2026年3月15日)
・Sky Sports F1「F1 confirms cancellation of Bahrain and Saudi Arabian GPs」(2026年3月15日)
・motorsport.com「Bahrain and Saudi Arabia F1 races officially cancelled」(2026年3月15日)
・ESPN F1「F1 cancel Bahrain, Saudi Arabia races due to Iran war」(2026年3月15日)
・PlanetF1「BREAKING: F1 cancels Bahrain and Saudi races in 2026」(2026年3月15日)
・日刊スポーツ「矢作師がフォーエバーヤングとドバイ現地の状況を説明」(2026年3月11日)
・netkeiba「ドバイワールドカップデーの馬券発売見送り」(2026年3月6日)
・netkeiba 特集「ドバイワールドカップデー2026まとめ」(随時更新)
・motorsport.com 日本版「MotoGP、中東情勢混乱でカタールGPを終盤戦に延期か」(2026年3月14日)
・motorsport.com「MotoGP: Qatar GP admits hosting will be 'difficult'」(2026年3月4日)
・Motorsport Week「MotoGP Qatar GP 'unlikely', but a 'plan B' is in place」(2026年3月4日)
・Crash.net「MotoGP admits Qatar GP in doubt due to Middle East conflict」(2026年3月4日)
・Thoroughbred Daily News「Top European Connections Say Decision On Dubai World Cup Participation To Be Left Late」(2026年3月7日)
✍️ 執筆者情報
🥇 ぱぶちゃん(元海貨業者)
📈 投資歴6年 💹 XAUUSD 🌐 マクロ経済 📰 一次情報重視
世界の金融市場・経済指標を中心に、一次情報と複数の主要メディアを照合し、事実に基づき中立的な立場で整理・解説しています。投資歴6年、近年はXAUUSDを中心にFXで取引中。難しい専門用語より「で、ゴールドどうなんだ」という視点を大切にしてるぞ。
📣 X(Twitter):@pablo29god
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