2026年3月12日(木)|中東情勢シリーズ 続編
【開戦12日目】ホルムズ機雷・商船3隻被弾・米5,000標的攻撃
ドラール会見後も戦火は拡大|最新情勢とゴールドの行方
前回記事「原油$119→$85」の続編 / 3月10日ドラール会見以降の情勢を総まとめ
② イランは対抗してホルムズ海峡で機雷敷設を開始。米軍は機雷敷設艦16隻を撃沈
③ ホルムズ周辺で商船3隻被弾(商船三井「ONE Majesty」含む)。ペルシャ湾内に総計200隻超が足止め、うち日本関係船45隻・日本人乗組員24名
④ IEAが史上最大4億バレルの備蓄協調放出を決定。原油は高止まりが継続
⑤ 米・イスラエルはハメネイ師殺害後も攻撃継続。イランは「ミサイル→ドローン」消耗戦に戦術転換。ゴールドは底堅さを維持しつつ地政学プレミアムが剥落していない
1. ドラール会見後に何が変わったか
前回記事(3月10日)が終わった地点——トランプ大統領がフロリダ州ドラール記者会見で「Very soon」を繰り返した後——から、状況は複雑に動いた。
2. 米・イスラエルの攻撃詳細(5,000標的の内訳)
🇺🇸 米国(エピック・フューリー作戦)
ホワイトハウス報道官によると、開戦12日目までに米国はイラン国内で5,000カ所以上の標的を攻撃済みだ。主な内訳は以下の通り。
| カテゴリ | 主な成果 |
|---|---|
| 指揮系統 | ハメネイ最高指導者を殺害。国家安全保障会議(SNSC)本部・公正識別評議会ビルを破壊 |
| 核施設 | 地下核兵器施設「Min Zadai」とされる施設を破壊。核施設への直接攻撃が初めて確認 |
| ミサイル施設 | 大型弾道ミサイル製造施設を重爆撃機で破壊。弾道ミサイルによるイランの反撃能力は9割減 |
| 海軍 | ソレイマニ級軍艦4隻(1クラス全滅)を含む多数の艦艇を撃沈。機雷敷設艦16隻も破壊 |
| ドローン・防空 | ドローン基地・発射拠点・レーダー施設を多数破壊。防空能力は大幅に低下 |
🇮🇱 イスラエル(ユダの盾作戦・獅子の雄たけび作戦)
イスラエル空軍は開戦初日だけで戦闘機約200機・爆弾1,200発超を投下するという史上最大規模の出撃を実施。その後も攻撃を継続している。
なお、イスラエルは3月8日にテヘラン近郊の燃料施設を独自に攻撃。これは米国が「攻撃を控えるよう求めていた」石油インフラだったため、米国が不快感を示すという同盟内の摩擦も生じている。
3. イランの反撃全容
📊 反撃の全体像
| 反撃の種類 | 規模・内容 | 主な標的 |
|---|---|---|
| 弾道ミサイル | UAE向けだけで186発(開戦〜3/3時点) | 米軍基地・空港・インフラ |
| ドローン(シャヘド) | UAE向けだけで812機(開戦〜3/3時点) | 石油施設・軍事基地・空港 |
| 巡航ミサイル | UAE向けで8発(全弾迎撃) | 防衛関連施設 |
| 商船攻撃 | 2/28〜3/11で計13件の攻撃報告(UKMTO) | ホルムズ通過商船 |
| 機雷敷設 | 約12個をホルムズに敷設開始(米情報) | ホルムズ海峡全体 |
⚔️ 戦術の転換:ミサイル→ドローン消耗戦
開戦初期は弾道ミサイルによる大規模攻撃を行っていたイランだが、米・イスラエルの継続的な破壊工作でミサイル能力は9割減少したとされる。これに対しイランが取った戦略転換が「シャヘド136」中心のドローン飽和攻撃だ。
🌍 攻撃対象国の広がり
イランの反撃はイスラエルにとどまらず、湾岸全域に拡大している。UAE・バーレーン・カタール・クウェート・サウジアラビア・ヨルダン・キプロス(英軍基地)・イラク、そして今後は米本土西海岸も警戒対象となった。レバノンのヒズボラも対イスラエル攻撃に参加しており、イスラエル軍の死者も出始めた(3/8時点で2名)。
4. ホルムズ海峡危機と商船被弾の詳細
🚢 3月11日:5時間で商船3隻被弾
| 船名 | 船籍 | 船種 | 所有・運航 | 被害状況 |
|---|---|---|---|---|
| ONE Majesty | 🇯🇵 日本 | コンテナ船 | 商船三井保有/ONE運航 | 船尾損傷。乗組員(日本人含む)無事。自力航行可能 |
| Mayuree Naree | 🇹🇭 タイ | バルカー(ばら積み) | タイ系企業 | 全焼・乗組員放棄。20名救助。3名行方不明。IRGCが攻撃認める |
| Star Gwyneth | — | バルカー(ばら積み) | Star Bulk社 | 被弾確認。詳細調査中 |
ONE(オーシャン・ネットワーク・エクスプレス)は商船三井・日本郵船・川崎汽船の3社が出資するコンテナ船合弁会社(シンガポール本社)だ。日本の大手3社が絡む船がホルムズで被弾したという事実は、この紛争が日本のサプライチェーンに直接的な打撃を与え始めた証左となる。
なお、Mayuree Nareeはドバイからインドのグジャラート州アラン解体ヤードに向かう途中に攻撃を受けた。船自体は廃船予定だったが、ホルムズを通過しようとして被弾した形だ。
🗾 日本への影響
※ 45隻・24名は日本船主協会発表(3月11日時点)。石油備蓄254日分は経済産業省資料(2025年末時点)。
3月11日(火)夜、X(旧Twitter)では「ガソリンスタンドに2時間待ち」「明日から値上げと聞いて来た」という投稿が全国各地から相次いだ。そして3月12日(本日)から実際にレギュラーガソリンが180〜190円台へ値上げ(前日比+約20円)。ホルムズ海峡の封鎖は、遠い中東の戦争ではなく、日本人の財布と日常生活に直結した現実となっている。
🧨 機雷問題の深刻さ
米軍はイランの機雷敷設艦16隻を破壊したと発表したが、実際に機雷が海峡に敷設されたかどうかについては情報が錯綜している。トランプ自身は「機雷の報告はない」と述べた一方、CNNは「イランが約12個の機雷を敷設し始めた」と報じた(仏マクロン大統領は「確認していない」)。
仮に機雷が敷設されていた場合、掃海作業は数週間以上を要する可能性があり、ホルムズ封鎖の長期化シナリオが現実味を帯びる。
5. IEA 史上最大4億バレル放出の意味
3月11〜12日、国際エネルギー機関(IEA)加盟32カ国が史上最大規模の備蓄協調放出——4億バレル——で合意した。過去最大はリビア内戦時の6,000万バレルであり、その規模は異次元だ。
前回記事ではトランプの「戦争ほぼ完了」発言後もゴールドが底堅く推移した点を分析した。その後の展開はどうか。
📈 現在のゴールドを動かす力学
| 要因 | 方向性 | 現状評価 |
|---|---|---|
| 地政学リスク(中東危機) | ↑ 上昇圧力 | 開戦12日目、収束の兆しなし。継続中 |
| ドル強さ(リスクオフ) | ↓ 下落圧力 | 終戦期待でリスクオン→ドル安局面もあるが反転が速い |
| 原油高→インフレ期待 | ↑ 上昇圧力 | WTI/Brent高止まり。IEA放出後も下がらず |
| 「停戦期待」フロー | ↓ 下落圧力 | トランプ発言のたびに一時的に売り→が、すぐ反発 |
| 代替安全資産需要 | ↑ 上昇圧力 | 湾岸諸国のドル資産リパトリで金需要が増加 |
🔄 ゴールドの「非線形ボラティリティ」パターン
現在のゴールドは以下のサイクルを繰り返している。これは4段階理論の第2〜3フェーズの境界で起きる典型的な動きだ:
停戦期待ニュース → ゴールド下落 → 戦火再拡大ニュース → ゴールド急反発 → 前回高値に戻れずに若干切り下げ → 次の停戦期待…
この繰り返しの中で、ボトムは切り上がりつつある。地政学プレミアムが完全には剥落しないまま、次のショックを待っている状態だ。
ひとつ注目すべきは、機雷問題だ。機雷が実際にホルムズに敷設されたことが確認されれば、原油の供給断絶リスクが段違いに高まり、ゴールドへの安全資産フローが一段と強まる可能性がある。逆に「機雷なし」が確認されれば地政学プレミアムが一部剥落するシナリオもある。
戦略メモ(ブル・ベア・トリガー)
🐂 ブルシナリオ(上昇継続)
・ホルムズ機雷の存在が公式確認される
・イランがサウジ原油施設など大規模インフラを攻撃
・米国内(カリフォルニア)でイランのドローン攻撃が実際に発生
・戦線がさらに拡大しヒズボラが全面参戦
→ これらが重なった場合、$5,500〜$5,800台が視野に入る可能性がある(チャート節目・COT次第)
🐻 ベアシナリオ(調整深化)
・イランが停戦交渉に正式合意、軍事作戦が停止
・ホルムズが再開通し原油が$70台に急落
・FRBが緊急利上げ示唆(インフレ対応)でドル急騰
→ $4,800〜$4,900への調整もシナリオのひとつとして否定できない
⚡ 最大注目トリガー
① 機雷問題の決着:「敷設確認」か「敷設なし」かで原油・ゴールドが大きく動く
② 新最高指導者モジタバ・ハメネイ師の動向:公の場に出てこない状況が続く(負傷情報あり)。指揮系統の混乱が長引くほど予測不能な反撃リスクが高まる
③ トランプの次の「戦争終結」発言タイミング:またも「ほぼ完了」と言えば一時的な下押し圧力がかかる
まとめ
【開戦12日目・総まとめ】
トランプのドラール会見後、市場は一時「終戦」を織り込もうとした。しかし現実は——米・イスラエルによる5,000標的攻撃、イランのドローン消耗戦戦略、ホルムズへの機雷敷設疑惑、日本関係商船の被弾——いずれも戦火が拡大していることを示している。
最も重要な構造変化は、イランが「高コスト弾道ミサイル→低コストドローン飽和攻撃」に戦術転換したことだ。これにより消耗戦が長期化しやすい状況になり、米側の防空ミサイル在庫問題が浮上している。
ゴールドは「停戦期待フロー」と「地政学リスク継続」の綱引きの中に置かれているが、ボトムは切り上がっている。機雷問題・新指導者の動向・トランプの次の発言——これら3つのトリガーに注目しながら、過剰なポジションを避けつつ状況を見極めたい。
【出典】Bloomberg / CNN / NHK / 時事通信 / ロイター / CNBC / Al Jazeera / Times of Israel / NPR / CENTCOM公式 / IEA公式 / 日本船主協会 / 経済産業省
🥇 執筆者:ぱぶちゃん
✍️ 執筆者 / 運営者 📈 投資歴6年 / 💹 XAUUSD(金/ドル) / 🌐 マクロ経済 / 📰 一次情報重視
🐦 X(旧Twitter): @pablo29god
世界の金融市場・経済指標を中心に、一次情報と複数の主要メディアを照合し、事実に基づき中立的な立場で整理・解説しています。投資歴6年、近年はXAUUSDを中心にFXで取引中。都合により証拠金・ポジションは公開できません。難しい専門用語より「で、ゴールドどうなんだ」という視点を大切にしてるぞ。
投資は、投資家自身の判断と責任で行うべきものであり、当ブログは投資判断に関する一切の責任を負いません。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。掲載している経済指標・イベント情報は、各種メディア・公的機関の発表をもとに筆者が整理したものですが、発表日時・内容は予告なく変更される場合があります。最新情報は各機関の公式発表でご確認ください。

