【キヤノン(7751)決算】2026年12月期第2四半期(中間期) 売上高2兆2,745億円・営業利益2,306億円で増収増益、通期予想を上方修正——中東情勢とメモリ高騰の悪化要素を関税還付・円安が相殺
2026年7月27日|ぱぶちゃんのファンダメンタルlab
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キヤノンの2026年12月期中間期(2026年1〜6月)決算は、売上高2兆2,745(2兆1,986)億円・前年同期比+3.5%、営業利益2,306(2,143)億円・+7.6%、税引前中間純利益2,521(2,223)億円・+13.4%、当社株主に帰属する中間純利益1,712(1,559)億円・+9.8%と増収増益を達成した。第2四半期(4〜6月)単独では売上高1兆1,809億円(+3.6%)で四半期として過去最高を更新し、営業利益は1,592億円・+35.2%と大幅増益となった。カメラ・ネットワークカメラを擁するイメージング事業が二桁増収増益で牽引する一方、メディカル事業は生産システム切り替え時の不具合と調達先の被災により製品供給が遅延し減収減益となった。通期業績予想は、中東情勢の長期化とメモリ価格高騰による悪化要素(合計▲406億円)を、米国関税還付(+375億円)と下期為替前提の円安修正(+341億円)がほぼ相殺し、営業利益を前回見通しから90億円上方修正して4,650億円(対前年+2.1%)とした。年間配当は前期実績と同水準の160円を据え置く予想。
📋 目次
1|キヤノンとはどんな会社か
キヤノン株式会社(東京都、東証プライム:コード7751)は、事務機器・カメラ・産業機器を展開する総合精密機器メーカー。事業セグメントはプリンティング(複合機・プリンター・商業印刷機器)、メディカル(CT・超音波診断装置・X線診断装置等)、イメージング(デジタルカメラ・ネットワークカメラ等)、インダストリアル(半導体露光装置・FPD露光装置等)、その他及び全社の5区分。代表取締役会長CEOは御手洗冨士夫氏。同社の中間連結財務諸表は米国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準(米国基準)に基づいて作成されている。
2|主要財務ハイライト(中間期・2Q、前年同期比)
2026年7月27日、キヤノンは2026年12月期第2四半期(中間期、2026年1月〜6月)の決算短信を発表した。中間期累計では前年同期に対し営業利益+7.6%、税引前中間純利益+13.4%、中間純利益+9.8%と増収増益となった。
| 指標(中間期累計) | 2026年12月期中間期 | 2025年12月期中間期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2兆2,745億円 | 2兆1,986億円 | +3.5% |
| 営業利益(利益率) | 2,306億円(10.1%) | 2,143億円(9.7%) | +7.6% |
| 税引前中間純利益 | 2,521億円 | 2,223億円 | +13.4% |
| 当社株主に帰属する中間純利益 | 1,712億円 | 1,559億円 | +9.8% |
| 基本的1株当たり中間純利益 | 197.51円 | 169.16円 | +16.8% |
| 中間包括利益 | 2,149億円 | 1,166億円 | +84.3% |
第2四半期(4〜6月)単独では、売上高1兆1,809億円(前年同期1兆1,402億円、+3.6%)と第2四半期として過去最高を更新した。営業利益は1,592億円(前年同期1,178億円、+35.2%)、営業利益率は13.5%(前年同期10.3%)まで大きく改善。純利益は1,229億円(+46.9%)で純利益率は10.4%と二桁水準に達した。為替はドル・ユーロとも前年より10%以上円安で推移したことが増収・増益双方を押し上げた主因の一つ。
3|セグメント別動向
| セグメント(中間期累計) | 売上高 | 前年同期比 | 営業利益 | 前年同期比 | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| プリンティング | 12,399億円 | +1.5% | 1,575億円 | +5.0% | 12.7% |
| メディカル | 2,774億円 | -0.7% | 83億円 | -29.2% | 3.0% |
| イメージング | 5,527億円 | +16.9% | 976億円 | +38.8% | 17.7% |
| インダストリアル | 1,452億円 | -9.1% | 174億円 | -33.1% | 12.0% |
| その他及び全社 | 1,129億円 | -3.2% | △500億円 | - | - |
プリンティング:商業印刷は、第1四半期までは欧米を中心に顧客の投資先送りが継続していたが、印刷会社が生産性向上を求めてデジタルプリント機器への投資を再開し、第2四半期は連帳機・カットシート機の大型機器が販売を伸ばして増収に転じた。オフィス複合機は米国関税と中東情勢の影響で本体販売が欧米中心に厳しい状況が続いたが、プリントボリュームを反映するサービス・消耗品売上は想定線で推移し、商談状況も下期に向けて改善が見られている。新シリーズ「imageFORCE」は低速機「imageFORCE C3100」の投入でラインアップが揃った。ITソリューションビジネスはDX・セキュリティ強化需要を背景に国内中心に増収を継続。
メディカル:新興国地域や重点地域の米国では大型商談の獲得が順調に進み受注自体は堅調に推移したが、4月に実施した生産システムの切り替えにおける不具合と、調達先の被災により、生産に必要な部品を納期通りに調達できず、受注済み製品の供給に大幅な遅れが生じたことから減収減益となった。生産正常化の時期は9月頃を見込んでおり、供給が回復する第4四半期以降に売上を回復させる計画。今年4月に日本で先行発売したフォトンカウンティングCTは欧州でも認証を取得し販売を開始、ドイツをはじめ多くの先端医療機関から引き合いを受けている。
イメージング:カメラは、若年層を中心とした新規ユーザー増加でコンパクトカメラの市場規模が拡大する中、昨年下期に実施した増産による供給増を背景に大幅増収。レンズ交換式カメラは新製品「EOS R6 Mark III」を中心にフルサイズモデルの販売が伸び平均単価が上昇したことで、カメラ全体では第2四半期に前年同期比+12.9%の増収となった。ネットワークカメラは、AI需要による投資が相次ぐデータセンターや商業用不動産向け大規模プロジェクトを中心に大きく伸び、好調だった第1四半期の伸び率を上回る2割以上の増収を達成。以上の結果、イメージンググループ全体で中間期は前年同期比+16.9%の大幅増収増益となった。
インダストリアル:ディスプレイ製造装置は、昨年パネルメーカーが米国関税やメモリ価格高騰を受けて投資判断を先送りした影響から、ユニット全体では減収となった。一方、半導体露光装置単体では、AI需要拡大を背景としたメモリ・ロジック向けが牽引し、第2四半期にAI関連の先端パッケージング向け後工程装置やメモリ向け装置を中心に48台を販売、増収を確保した。特にKrF装置は増産対応を進めており、下期の販売台数を前年から倍増させる計画。次世代の半導体製造装置として導入を進めるナノインプリントは、6月に評価・検証中の顧客へ追加装置を出荷し、2027年の量産適用に向け顧客ウエハーを用いた生産検証フェーズへ移行した。半導体向け成膜装置もHBM等のメモリ生産用途を中心に受注が大きく増加している。
4|財政状態
2026年6月末の総資産は前連結会計年度末に比べ2,431億円増加し6兆3,782億円となった。流動資産は現金及び現金同等物が1,459億円、棚卸資産が1,210億円それぞれ増加したことなどにより2,227億円増加。株主資本は自己株式取得(1,282億円)等の影響により3,483,846百万円(前期末比△7,962百万円)とわずかに減少し、株主資本比率は54.6%(前期末56.9%)へ低下した。なお2026年1月1日より有形固定資産の減価償却方法を定率法から定額法へ変更しており、この影響により中間連結会計期間の減価償却費は12,644百万円減少、当社株主に帰属する中間純利益及び基本的1株当たり中間純利益はそれぞれ8,731百万円・10円7銭押し上げられている点には留意したい。
5|キャッシュフロー
中間期の営業活動によるキャッシュ・フローは2,054億円(前年同期1,589億円)と前年を大きく上回った。投資活動によるキャッシュ・フローは△1,030億円。財務活動によるキャッシュ・フローは358億円(前年同期1,874億円)で、長期債務による調達1,000億円がある一方、自己株式取得及び処分による支出1,282億円、配当金支払703億円が計上されている。現金及び現金同等物の期末残高は7,319億円(前年同期比+167億円)。通期見通しでは、戦略的な部品在庫の積み増しを行いつつも営業キャッシュ・フローは前年実績4,759億円を大きく上回る5,450億円を計画しており、半導体露光装置の宇都宮新工場やメディカル・ネットワークカメラ領域への積極投資と、年間配当160円・2,000億円の自社株買いによる株主還元を並行して進める方針。
6|通期ガイダンス(上方修正)
| 指標 | 2026年最新見通し | 前年比 | 前回見通し | 対前回 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 4兆8,000億円 | +3.8% | 4兆7,650億円 | +350億円 |
| 営業利益 | 4,650億円 | +2.1% | 4,560億円 | +90億円 |
| 税引前利益 | 4,920億円 | +2.1% | 4,830億円 | +90億円 |
| 純利益 | 3,400億円 | +2.4% | 3,330億円 | +70億円 |
前回計画に織り込めなかった不確定要素を反映し、営業利益見通しを90億円上方修正した。悪化要素は、中東情勢影響△346億円(売上正常化を10月以降まで延伸すると想定し、原油関連の原材料・部品コストや輸送費などの上昇を織り込み)と、メモリ価格高騰による追加コストアップ△60億円の合計△406億円。好転要素は、還付を含めた米国関税影響+375億円と、下期前提為替レートをUSドル150円→155円、ユーロ175円→180円に円安方向へ見直したことによる為替影響+341億円の合計+716億円。両者がほぼ相殺され、営業利益見通しは前回公表を90億円上回る4,650億円となった。
| セグメント(通期見通し) | 売上高 | 前年比 | 営業利益 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| プリンティング | 2兆5,442億円 | +2.0% | 2,560億円 | +0.1% |
| メディカル | 5,682億円 | -2.1% | 228億円 | -30.4% |
| イメージング | 1兆2,015億円 | +13.9% | 1,915億円 | +10.8% |
| インダストリアル | 3,537億円 | -2.1% | 603億円 | -3.6% |
プリンティングは下期の市況好転に加え、B3サイズ新製品「varioPRINT iX1700」やB2サイズ新製品「varioPRESS iV7」など新製品の売上本格化で成長を加速させる計画。メディカルは9月の生産正常化後、第4四半期以降の売上回復を見込む。イメージングはコンパクトカメラの増産体制構築とレンズ交換式新製品「EOS R6 V」の投入、ネットワークカメラの二桁増収継続で年間13.9%増収を目指す。インダストリアルは半導体露光装置、特にKrF装置の下期出荷倍増により大幅増収を計画している。
7|IFISコンセンサスとの比較
決算発表直前(IFIS株予報、2026年7月14日時点のデータ)のIFISコンセンサスでは、通期経常利益(税引前利益)予想は468,934百万円(前期比-2.7%)と、会社予想の483,000百万円(+0.2%)を下回るやや弱気な水準だった。中間期のコンセンサス予想は189,744百万円だったのに対し、実際の中間期税引前中間純利益は252,074百万円となり、コンセンサスを32.9%上回る大幅な上振れとなった。
| 指標 | IFISコンセンサス(2026年7月14日時点) | 決算発表前会社予想 | 今回発表・最新会社予想 |
|---|---|---|---|
| 中間期税引前利益(実績) | 1,897億円 | - | 2,521億円(実績・+32.9%) |
| 通期経常(税引前)利益 | 4,689億円(-2.7%) | 4,830億円(+0.2%) | 4,920億円(+2.1%) |
第1四半期(1〜3月)の税引前損益はIFISコンセンサス(981億円)を23.8%下回り、会社側も通期予想を4,950億円から4,830億円へ下方修正するなど、上期序盤はコンセンサスに対して弱気な流れだった。しかし第2四半期の大幅増益(営業利益+35.2%)を経て、通期予想は4,830億円→4,920億円へ再び上方修正され、決算発表前のIFISコンセンサス(4,689億円)を4.9%上回る水準まで挽回している。四半期ごとの振れ幅が大きい点は、次回3Q決算時のコンセンサス動向とあわせて注視したい。
8|配当
- 配当予想:2026年12月期は第2四半期末80円・期末80円の年間160円を予想(前期実績160円から据え置き)。配当性向40%を目途に安定的かつ積極的な利益還元方針を継続。
- 修正の有無:直近に公表されている配当予想からの修正はなし。
- 自社株買い:2026年1月に設定した2,000億円の自社株買いを進めており、配当とあわせて積極的かつ安定的な株主還元を実施中。
9|為替動向
中間期の平均為替レートはUSD158.27円・EUR184.54円(前年同期USD148.34円・EUR162.23円)で、前年より10%以上の円安。通期の前提レートはUSD156.56円・EUR182.08円へ見直され(前回見通しUSD151.58円・EUR176.82円)、特に下期はUSD150円→155円、EUR175円→180円と円安方向に修正された。この結果、2Q単独の営業利益分析では為替要因だけで+289億円のプラス寄与(売上+934億円、原価△322億円、経費△323億円の内訳)、通期の対前回見通しでも為替要因で+341億円のプラス寄与となっている。1円の変動が下期の売上・営業利益に与える影響は、USDが売上68億円/営業利益15億円、EURが売上33億円/営業利益15億円で、想定レートから円高方向へ振れた場合は相応の減益要因となる点に留意したい。
10|在庫の状況
2026年6月末の在庫金額は合計9,615億円(3月末比+478億円、前期末比+1,211億円)、在庫日数は77日(3月末比+8日)となった。円安による外貨建て資産の増加に加え、プリンティング・イメージング・半導体露光装置を中心に下期の販売拡大に向けて在庫を積み増したこと、逼迫しているメモリや半導体部品を先行手配したことが増加要因。下期の商戦期を経て年末の商品在庫は適正水準へ低下する見通しだが、原材料・仕掛品在庫については、半導体露光装置が来年の出荷数量増加に備えた増産体制にあることと、需給が逼迫するメモリの早期確保を図るため、年末は来期に向けて戦略的に通常よりも高い在庫水準とする計画である。
11|リスク・注視すべきポイント
⚠️ 決算資料から読み取れる留意点
特に①メディカル事業の生産正常化の実現可否と②中東情勢の収束時期の2点が、下期業績を大きく左右しやすいと見る。
①メディカル事業の生産正常化(9月見込み)が計画通り進むか——供給遅延の長期化は下期の減収要因として残るリスク
②中東情勢の収束時期——現行の通期予想は9月末まで現状継続・10月以降正常化を前提としており、想定より長期化した場合は346億円を超える追加の悪化要素となり得る
③メモリ価格高騰の継続——値上げ・追加コストダウンでの吸収を計画するが、正常化にはしばらく時間がかかる見通し
④想定為替レート(下期USD155円/EUR180円)から円高方向に振れた場合の減益圧力(1円の変動で下期営業利益に±15億円/USD、±15億円/EURの影響)
⑤米国関税還付(通期+375億円寄与)の継続性・制度変更リスク
⑥インダストリアルのディスプレイ製造装置は、パネルメーカーの投資判断先送りの影響が下期以降どこまで解消するか不透明
総じて今回の決算は、カメラ・ネットワークカメラを擁するイメージング事業の力強い増収増益と、円安・米国関税還付という外部環境が牽引し、全社としては増収増益を確保した内容だった。一方、メディカル事業は生産トラブルにより減収減益となり、インダストリアルもディスプレイ製造装置の投資先送りの影響が残るなど、事業間で明暗が分かれた四半期とも言える。通期予想は上方修正されたが、中東情勢の長期化とメモリ価格高騰という不確実要因が引き続き重荷であり、好転要素(関税還付・円安)に依存した相殺構造である点は意識しておきたい。
出典
- キヤノン株式会社「2026年12月期第2四半期(中間期)決算短信〔米国基準〕(連結)」(2026年7月27日公表)
- キヤノン株式会社「2026年第2四半期 決算補足資料」(2026年7月27日公表)
- キヤノン株式会社「2026年第2四半期 決算説明会資料」(2026年7月27日公表)
- 株式会社アイフィスジャパン「IFIS株予報 7751 キヤノン 業績進ちょくと決算スケジュール」(2026年7月14日時点データ)
✍️ 執筆者/ぱぶちゃん|投資歴6年/ぱぶちゃんのファンダメンタルlabを事実ベースで解説するブログを運営中。相場の「なぜ?」を一緒に考えましょう。ナンピンは得意です。/X(旧Twitter):@pablo29god
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