キオクシアに陪審評決、Viasat特許侵害で約2億2,900万ドル賠償命令——株価ストップ安、控訴も視野に
2026年7月17日|ぱぶちゃんのファンダメンタルlab
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2026年7月16日(米国時間)、米テキサス州ウェーコの連邦地裁陪審は、キオクシアホールディングス子会社の製品が米衛星通信会社Viasat, Inc.の特許(メモリーの誤り訂正技術)を侵害したと認定し、約2億2,900万ドル(約371億円、1米ドル=162円換算)の損害賠償を命じる評決を下した。これを受け17日の東京市場でキオクシアHD株(285A)は前日比-16.10%のストップ安(終値52,110円)で引けた。同社は評決に誤りがあるとして、控訴を含むあらゆる法的手段を講じる方針を表明している。連結業績への影響は現在精査中。
1|キオクシアとはどんな会社か
キオクシアホールディングス株式会社(東証プライム:285A)は、2018年に東芝メモリとして分社し、2019年に現在の社名へ変更した半導体メモリ大手だ。NAND型フラッシュメモリの生みの親である東芝の技術を継承し、メモリ及び関連製品の開発・製造・販売を手掛けている。代表取締役社長執行役員は太田裕雄氏。米国での販売事業は子会社Kioxia America, Inc.(代表:滑川英之氏)が担っている。
2025年12月に東証プライムへ新規上場して以降、生成AI向けデータセンター需要を追い風に株価が急騰し、一時はトヨタ自動車を抜いて時価総額国内首位に立つ場面もあった(52週高値112,700円)。もっとも2026年6月をピークに株価は調整局面に入っており、今回の訴訟評決はその下落トレンドの最中に飛び込んできたニュースとなる。
2|訴訟の経緯
訴訟の相手となったのはViasat, Inc.。米カリフォルニア州カールスバッドに本社を置く衛星通信会社で、代表はChairman of the Board and Chief Executive OfficerのMark D. Dankberg氏が務めている。
米国時間2021年11月29日、Viasatはキオクシア株式会社およびKioxia America, Inc.を相手取り、両社のフラッシュメモリー製品が自社の特許権1件(米国特許第8,615,700号、誤り訂正アーキテクチャーに関するもの)を侵害しているとして提訴した。Viasatは、衛星向けの誤り訂正システムを設計する過程で、消費電力を抑えつつメモリーの信頼性・寿命を高める技術を開発したと主張し、キオクシア製品に同じ仕組みの技術が使われていると訴えていた。
これに対しキオクシア側は特許侵害の事実を否定し、そもそも当該特許が無効であると反論。訴訟と並行して、米特許商標庁の特許審判部(PTAB)に特許無効審判も申し立てて争っていた。なお、Viasatは米半導体大手ウエスタンデジタルに対しても同様の特許侵害訴訟を別途提起しており、こちらは現在も係争中となっている。
3|評決の内容
米国時間2026年7月16日、米テキサス州西部地区連邦地方裁判所(ウェーコ)の陪審は、Viasatの主張を認める評決を下した。陪審は、キオクシアのフラッシュメモリー製品がViasatの特許権を侵害していると判断した。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 評決日 | 2026年7月16日(米国時間) |
| 審理裁判所 | 米国テキサス州西部地区連邦地方裁判所(ウェーコ) |
| 損害賠償金 | 229,025,021ドル(約371億円) |
| 賠償金の性質 | 2026年3月30日までの過去の侵害を補償するランニングロイヤルティ |
賠償金は「ランニングロイヤルティ」、つまり本来支払うべきだったライセンス料を後払いする性格のものと位置付けられている点がポイントだ。制裁金のような懲罰的な意味合いとは異なるが、金額としては前述の通り約371億円(1米ドル=162円で換算)と決して小さくない規模となっている。
4|株価反応
評決を受け、7月17日の東京市場でキオクシアHD株は急落し、制限値幅の下限(ストップ安)まで売り込まれて取引を終えた。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 終値 | 52,110円(前日比 -16.10%) |
| 始値/高値/安値 | 55,900円/56,750円/52,110円 |
| 出来高 | 4,150万株(平均出来高3,697万株超) |
| 時価総額/PER | 28.52兆円/51.79倍 |
| 52週高値/安値 | 112,700円/2,270円 |
まず本日の値動きを見ると、寄り付き直後に一旦52,900円台まで急落した後、9時台後半から10時台前半にかけて56,750円(高値)まで戻す反発局面があった。しかし10時台後半は55,000〜56,000円台でのもみ合いにとどまり、11時台に入ると再び売りが加速し、52,110円(ストップ安水準)まで一気に下落。その後は大引けまでほぼ同水準に張り付いたまま推移した。一度は買い戻しが入ったものの、材料の重さを改めて意識した売りが後場にかけて優勢になった格好だ。
📉 285A.T 本日(7月17日)の日中値動き
Yahoo!ファイナンスのデータを基に作成(分足は概算)
次に過去1年間のチャートで振り返ると、昨年7月頃の52週安値2,270円圏から緩やかな上昇基調が続き、2026年に入ってからAI関連の追い風を受けて上昇ペースが加速。3月以降は特に角度を強め、6月には52週高値112,700円まで駆け上がった(この過程で時価総額が一時トヨタを上回る場面もあった)。しかし高値圏で伸び悩んだ後は急速に調整局面へ転じ、今回の訴訟評決はその下落トレンドのただ中で追い打ちをかける形になった。
📈 285A.T 過去1年間の株価推移(2025年7月〜2026年7月)
Yahoo!ファイナンスのデータを基に作成(週次は概算)
5|キオクシア側の対応方針
キオクシアHDは7月17日付の適時開示で、「Viasat社の主張及び陪審の判断は到底容認できるものではなく」、評決に誤りがあると考える点について、評決後の申立てに加え、必要に応じて控訴を行うことを含め、取り得るあらゆる法的手段を講じる方針を明らかにした。
同社は第三者の知的財産を尊重する姿勢を強調しつつ、本件評決が顧客への製品・サービス提供に影響を及ぼすことはないと説明している。一方で、連結業績への影響については現在精査中とし、今後開示すべき事由が発生した場合には適宜公表するとした。
6|今後の注目点
⚠️ 確認しておきたいポイント
① 控訴審の行方——評決が見直される可能性や、賠償額が変動する可能性
② PTAB(米特許商標庁特許審判部)での特許無効審判の結果
③ Viasatがウエスタンデジタルに対して起こしている並行訴訟の判断が、本件にどう波及するか
④ 7月31日に予定される決算発表で、業績への影響がどこまで具体的に開示されるか
⑤ 株価面では、AI関連の成長期待とのバランスをどこで取り戻すか
今回の評決自体は「過去分のライセンス料相当額の後払い」という性格であり、直ちに事業継続に支障が出る性質のものではない。ただし、控訴審の結果次第で金額が変動する可能性があること、そしてAI需要を追い風に急騰していた株価がもともと調整局面にあった中でのニュースだったことから、投資家心理への影響はしばらく尾を引く可能性がある。今後の適時開示や決算発表での説明内容を、淡々と確認していく局面と言えそうだ。
出典
- キオクシアホールディングス株式会社「当社子会社に対する訴訟の陪審評決に関するお知らせ」(2026年7月17日)|原文PDF
- ロイター(Blake Brittain記者)「米陪審、キオクシアに2億ドル超賠償評決 フラッシュメモリー特許侵害で」(2026年7月16日)|記事リンク
- 時事通信「キオクシアの特許侵害認定 賠償金370億円―米陪審評決」(2026年7月17日)|記事リンク
- 株価データ:Yahoo!ファイナンス(285A.T、2026年7月17日引け時点)
✍️ 執筆者/ぱぶちゃん|投資歴6年/ぱぶちゃんのファンダメンタルlabを事実ベースで解説するブログを運営中。相場の「なぜ?」を一緒に考えましょう。ナンピンは得意です。/X(旧Twitter):@pablo29god
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