【クアルコム(QCOM)決算】Q3売上高99.5億ドルで自社ガイダンス上限達成、非GAAP EPSは市場予想にわずかに届かず——株価は時間外で下落
2026年7月30日|ぱぶちゃんのファンダメンタルlab
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クアルコムのFY26 Q3決算は、売上高99.5億ドルで自社ガイダンス上限を達成した一方、非GAAP EPS2.21ドルは市場予想(ソースにより2.21〜2.23ドル)にわずかに届かなかった。自動車事業は+61%で過去最高を更新したが、Apple向けモデムシェアの下振れとメモリ高によるQCT利益率低下見通しが重荷となり、株価は決算発表後の時間外取引で下落した。
📄 一次資料:決算プレスリリース/決算プレゼンテーション
📋 目次
1|クアルコムとはどんな会社か
クアルコム(NASDAQ:QCOM、米カリフォルニア州サンディエゴ本社)は、スマートフォン向けSnapdragonチップセットと膨大な無線特許ポートフォリオを持つ世界大手の半導体・通信技術企業。事業はQCT(半導体・チップセット事業、ハンドセット・自動車・IoTの3分野に細分化)とQTL(特許ライセンス事業)の2セグメント体制。会長兼CEOはCristiano Amon(クリスティアーノ・アモン)氏。近年はスマートフォン依存からの脱却を目指し、自動車・IoT・データセンターなど非ハンドセット領域への多角化を成長戦略の柱としている。
2|主要財務ハイライト(Q3、コンセンサス比)
2026年7月29日(現地時間)、クアルコムは2026年度第3四半期(4〜6月期)決算を発表した。売上高は自社ガイダンスの上限を達成した一方、非GAAP EPSは市場予想にわずかに届かない結果となった。
| 指標 | Q3 FY26実績 | コンセンサス予想 | Q3 FY25実績 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 99.47億ドル | 約96〜97億ドル(ソースにより幅あり) | 103.65億ドル |
| 売上高YoY | ▲4% | - | - |
| EPS(GAAP希薄化) | $1.87 | - | $2.43 |
| EPS(非GAAP調整後) | $2.21 | $2.21〜$2.23(ソースにより幅あり) | $2.77 |
| 純利益(非GAAP) | 23.56億ドル(▲23%) | - | 30.40億ドル |
| 自動車+IoT合算収益 | 34.0億ドル(+28%) | - | - |
| 株主還元 | 23億ドル(自社株買い14億ドル・配当9.73億ドル) | - | - |
📌 コンセンサス対比のポイント
- 売上高:市場想定(約96〜97億ドル)を上回り、自社ガイダンス(92億〜100億ドル)の上限に到達
- 非GAAP EPS:コンセンサス(ソースにより2.21〜2.23ドル)に対しわずかに未達〜インライン
- 自動車:+61%で四半期として過去最高、23四半期連続の二桁成長
- Modular Inc:買収完了、生成AI・エージェントAI向けソフト基盤を強化
CEOのCristiano Amon氏は、メモリ市場・サプライチェーンの厳しい環境下でも「成長戦略を着実に実行できた」とコメント。半導体業界全体で入力コストが上昇する中、9月1日からチップ価格を引き上げる方針を明らかにしており、粗利益率への恩恵は時間差で顕在化する見通しとしている。
3|セグメント別動向
| セグメント | 売上高 | 売上YoY | EBTマージン |
|---|---|---|---|
| QCT(合計) | 85.04億ドル | ▲5% | 26%(前年30%) |
| ―ハンドセット | 50.86億ドル | ▲20% | - |
| ―自動車 | 15.88億ドル | +61% | - |
| ―IoT | 18.30億ドル | +9% | - |
| QTL | 12.78億ドル | ▲3% | 69%(前年71%) |
ハンドセット収益は▲20%と大きく落ち込んだ一方、自動車は過去最高の15.88億ドル(+61%)、IoTも+9%と二桁近い成長を維持。自動車+IoT合算では34億ドル、+28%となり、非ハンドセット領域の拡大が続いている。QCT・QTLともにEBTマージンは前年から低下しており、収益性面ではやや重い決算内容となった。
4|特殊要因
半導体業界全体でウェハ・組立・テスト・先端パッケージング・メモリ等の入力コストが全面的に上昇しており、会社は製品価格への転嫁を進めている段階にある。CEOのAmon氏は9月1日からチップ価格を引き上げると明言しており、粗利益率への恩恵は価格改定が浸透するにつれて時間差で顕在化する見通しとしている。
中国OEM向けハンドセット売上は今第3四半期に底打ちしたとの認識を会社側は示しており、第4四半期には二桁の前四半期比成長への回帰を見込んでいる。一方で、Apple向け供給制約により、次期iPhone向けのモデムシェアが従来想定の20%から大幅に下振れる見通しとなり、Apple関連売上の減少が第4四半期から加速する見込みであることが新たに明らかになった。
メモリ価格高騰・供給制約の影響で、QCT Androidハンドセット収益はFY26通期で前年比約20%減となる見込みで、通期EPSに1.50ドル超の押し下げ要因になるとの試算が示されている。
5|四半期トレンド
9ヶ月累計(FY26 Q1〜Q3)の売上高は327.98億ドルで、前年同期(330.13億ドル)からほぼ横ばい。純利益は123.77億ドル(前年86.58億ドル)と大幅増となっているが、これは繰延税金資産に関するバリュエーション・アロワンスの取り崩し益を含む特殊要因が大きい。四半期ベースの非GAAP EPSは前年の2.77ドルから2.21ドルへと縮小基調が続いている。
6|キャッシュフロー・財務体質
| 項目(9ヶ月累計) | 2026年6月末 | 2025年6月末 |
|---|---|---|
| 営業キャッシュフロー | 84.05億ドル | 100.16億ドル |
| 設備投資 | 15.78億ドル | 7.85億ドル |
| 自社株買い | 68.06億ドル | 63.47億ドル |
| 配当支払い | 28.68億ドル | 28.48億ドル |
| 項目(期末残高) | 2026年6月末 | 2025年9月末 |
|---|---|---|
| 現金・現金同等物 | 45.33億ドル | 55.20億ドル |
| 総資産 | 573.67億ドル | 501.43億ドル |
| 長期債務 | 127.81億ドル | 148.11億ドル |
| 株主資本 | 276.58億ドル | 212.06億ドル |
9ヶ月累計の営業キャッシュフローは前年から減少した一方、設備投資は倍増。財務体質面では長期債務の圧縮と株主資本の積み増しが進んでおり、バランスシートは引き続き健全な水準を保っている。
7|通期・Q4 FY26ガイダンス
| 指標 | 最新ガイダンス(Q4 FY26) |
|---|---|
| 売上高 | 97億〜105億ドル |
| 非GAAP EPS | 2.05〜2.25ドル |
| 非GAAP営業費用 | 約27.0億ドル |
| QCT売上高 | 84億〜90億ドル |
| QCT EBTマージン | 23〜25%(Q3実績26%から低下) |
| QTL売上高 | 12億〜14億ドル |
| 非GAAP実効税率 | 12.5%(FY26通期13.0%) |
会社は半導体入力コスト上昇の影響をQ4ガイダンスに織り込み済みと説明している。QCT EBTマージンがQ3実績(26%)からQ4ガイダンス(23〜25%)へ低下する見通しとなっているのは、価格転嫁が実際に効き始めるまでのタイムラグを反映したもので、市場ではこの利益率低下見通しが特に警戒された。
8|注目イベント・戦略トピックス
- 6月開催のInvestor DayでFY29非ハンドセット収益目標を220億ドル→400億ドルへほぼ倍増(自動車100億ドル、IoT140億ドル超、データセンター150億ドル超)
- データセンター事業で新製品ブランド「Qualcomm Dragonfly」始動——コネクティビティ・カスタムシリコン・AIアクセラレータ・CPUの4製品ラインで2029年TAM 1兆ドル超を目指す。量産開始時期はコネクティビティがFY26、カスタムシリコンがQ1 FY27、AIアクセラレータが2H FY27、CPUが2H FY28と段階的に立ち上がる計画
- Metaとデータセンター向けCPUで複数世代にわたる戦略提携を発表(Dragonfly C1000、2028年後半量産予定、クロック5GHz超・250コア超のOryonサーバーコア採用)
- Modular Inc買収完了、生成AI・エージェントAI向けのオープンなソフトウェア基盤を強化
- Hugging Faceとの提携を拡大し、デバイスからクラウドまでのエージェントAIワークロード展開を推進
- Samsung Galaxy新製品群(Z Fold8/Flip8、Galaxy Watch、スマートグラス)にSnapdragon搭載範囲を初めて拡大
- 新製品「Snapdragon START」を発表——40ドル台からメガネをAI対応デバイス化できるリファレンスプラットフォーム
- 自動車分野でStellantis・BMWとのDigital Chassis契約を拡大、BMWの次世代コックピット・自動運転の主要コンピュートパートナーに指定
9|株価反応
クアルコム株は決算発表前日(7月28日)に162.88ドルで引け、決算発表当日(7月29日)の通常取引でも155.57ドルまで▲4.49%下落して引けた。決算発表後の時間外取引ではさらに下落し、報道により幅はあるものの144〜146ドル台(前日引け比▲6.5〜7.65%程度)まで下げる場面が見られた。
売上高が自社ガイダンスの上限を達成したにもかかわらず株価が下落した背景には、非GAAP EPSがコンセンサス(ソースにより2.21〜2.23ドル)にわずかに届かなかったこと、Apple向けモデムシェアの下振れ加速が新たに示されたこと、QCT利益率の低下見通し、メモリコスト高への警戒感が複合的に作用したとみられる。同社株は決算発表前から年初来ほぼ横ばい圏で推移していたが、決算発表後は年初来マイナス圏に転落する形となった。
10|リスク・注視すべきポイント
⚠️ 決算資料・関連報道から読み取れる留意点
① Apple向けモデムシェアの下振れが今後複数四半期にわたり収益に影響する可能性がある
② メモリ価格高騰・半導体入力コスト増が粗利益率を圧迫する構造が当面続く見通しで、価格転嫁の浸透ペースが焦点となる
③ 中国スマートフォン市場の底打ち・回復シナリオは会社側の想定にとどまり、実際の需要動向次第で変動しうる
④ QCT EBTマージンがQ3実績(26%)からQ4ガイダンス(23〜25%)へ低下する見通しで、収益性トレンドの転換点になり得るか注視が必要
⑤ データセンター事業は投資先行フェーズにあり、実際の収益貢献はFY27以降(カスタムシリコン量産Q1FY27、AIアクセラレータ2H FY27)に本格化する計画のため、当面はコスト先行となる
総じて今回の決算は、売上高が自社ガイダンス上限を達成し自動車・IoT事業の成長も続いた一方、非GAAP EPSのわずかな未達とApple関連売上の下振れ加速、QCT利益率の低下見通しが市場の警戒を招いた回となった。次回Q4 FY26決算では、価格転嫁の進捗による利益率の回復度合いと、中国ハンドセット市場の実際の回復ペースが焦点になりそうだ。
出典
- Qualcomm Incorporated「Third Quarter Fiscal 2026 Results」(プレスリリース、2026年7月29日)
- Qualcomm Incorporated「Third Quarter Fiscal 2026 Earnings Presentation」(2026年7月29日)
- CNBC「Qualcomm (QCOM) earnings report Q3 2026」(2026年7月29日)
- Investing.com「Earnings call transcript: Qualcomm Q3 2026 beats revenue but shares slide」(2026年7月29日)
- Investing.com「Qualcomm Q3 FY26 slides: diversification accelerates amid headwinds」(2026年7月29日)
- 24/7 Wall St.「Is Qualcomm Stock a Buy Ahead of July 29 Q3 Earnings?」(2026年7月27日)
- TheStreet「Qualcomm faces crucial test after brutal 35% slide」(2026年7月28日)
✍️ 執筆者/ぱぶちゃん|投資歴6年/ぱぶちゃんのファンダメンタルlabを事実ベースで解説するブログを運営中。相場の「なぜ?」を一緒に考えましょう。ナンピンは得意です。/X(旧Twitter):@pablo29god
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