防衛はまず経済
― 高市自民党「責任ある積極財政」を冷静に検証する ―
防衛を語る前に、経済を語らなければならない
防衛力強化という言葉が出ると、どうしても軍事費や装備の話に目が向きがちだ。しかし、国家の防衛力を長期的に支えるのは、兵器でも制度でもなく経済力である。
家計が疲弊し、企業が投資を控え、内需が縮小している国が、果たして防衛を持続的に強化できるのか。この問いを避けたまま、防衛だけを語ることはできない。
昨日の会見で、ようやく見えた高市自民党の経済政策
2026年2月9日、高市早苗自民党総裁は記者会見で、同党の経済政策の方向性を明確に示した。
キーワードは「責任ある積極財政」。
これまで断片的に語られてきた政策が、ようやく一つのパッケージとして国民の前に提示された形だ。選挙での圧勝により、国民の支持は得た。しかし、政策の中身が十分に理解されたかといえば、これからが本番だろう。
「責任ある積極財政」とは何か
高市総裁は、積極財政を掲げつつも、無制限な国債発行には否定的な姿勢を示している。
特に注目されたのが、次の説明だ。
特例公債の発行に頼ることはありません。
補助金や租税特別措置の見直し、税外収入などにより、2年分の財源を確保した上で実施します。
財政規律を意識した説明ではある。しかし、ここには重要な論点がある。
国債は国債、金利のある世界では意味が変わる
特例公債であれ、建設国債であれ、国債は国債だ。
発行した瞬間に、将来の債務となる点に違いはない。
そして、今の日本はかつてとは決定的に違う。
すでに「金利のある世界」に戻っている。
ゼロ金利時代であれば、国債残高の増加は先送りできた。しかし現在は、金利上昇が利払い費の増加として、即座に国家予算を圧迫する。
一方で、政府が想定する成長戦略の効果は数年後だ。
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金利負担は「今」増える
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成長の果実は「将来」に出る
この時間差リスクをどう吸収するのかについて、記者会見では十分な説明があったとは言い難い。マーケットが慎重になるのも無理はない。
予算編成を変えるという発想と、基金の問題
高市自民党は、単年度主義を見直し、複数年度で基金を積み、成長分野に継続的に投資する構想を示している。また、3年程度で効果を検証・評価するとしている。
理念としては理解できる。しかし、日本はすでに同様の仕組みを長年使ってきた。
その結果どうなったか。
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基金を管理する外郭団体が増える
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評価は形式的になる
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官僚OBの再就職先、いわゆる天下りの温床になる
「監視する」「評価する」という言葉自体は新しくない。
問題は、制度そのものが既得権益を生みやすい構造になっている点だ。過去の実績を踏まえるなら、今回も同じ道を辿らない保証はない。
五公五民の国で、経済は回るのか
さらに根本的な問題がある。
現在の日本は、税金と社会保険料を合わせると、実質的に「五公五民」に近い状態だ。政府が国民の可処分所得を大きく削っている。
この状況で、消費が伸び、投資が増え、経済が自律的に成長するだろうか。
答えは冷静に考えれば明らかだ。
三公七民でなければ、物価高にも防衛にも耐えられない
本気で日本を強くしたいなら、必要なのは財政出動の前に家計の体力回復だ。
目指すべきは三公七民。
国民が稼ぎ、使い、備える余地を取り戻すことが、結果として経済成長につながる。
防衛を強化したいなら、まず経済。
経済を強くしたいなら、まず可処分所得。
この順番を間違えれば、どれだけ立派な成長戦略も机上の空論になる。
まとめ
高市自民党の圧勝は、確かに民意の結果だ。しかし、それは政策の中身まで無条件に支持されたことを意味しない。
「責任ある積極財政」は、言葉としては魅力的だが、金利のある世界、巨額の債務、既存の制度疲労という現実の中で、本当に機能するのかは冷静に検証されるべきだ。
正直に言えば、この政策は5年前なら正しかった部分が多い。
世界が変わった今、それでも通用するのか。
日本がじわじわと衰退する道を避けられるのか。
その答えは、これからの政策運営と、国民の厳しい視線にかかっている。
執筆者:pablo 世界の金融市場・経済指標を中心に、事実に基づき中立的な立場で整理・解説しています。 ※投資は、投資家自身の判断と責任で行うべきものであり、当ブログは投資判断に関する一切の責任を負いません。


