- NFP+17.8万人の大半はヘルスケア・輸送・レジャーの2月反動。構造的な改善ではない
- 時給前年比+3.5%(予想+3.8%)と鈍化。Fed利下げ議論への影響は限定的
- 連邦政府雇用は▲1.8万人、ピーク比累計▲35.5万人(▲11.8%)と削減継続
発表数値一覧
2026年4月3日 21:30 JST(米国時間 8:30 EDT)、BLS(米労働省)発表。なお本日はGood Fridayのため米国株式市場は休場。為替・金市場は通常通り稼働した。
| 指標 | 結果 | 予想 | 前回 | 前回改定 |
|---|---|---|---|---|
| 非農業部門雇用者数(NFP) | +17.8万人 | +6.0万人 | ▲9.2万人 | ▲13.3万人 |
| 失業率 | 4.3% | 4.4% | 4.4% | — |
| 平均時給(前月比) | +0.2% | +0.4% | +0.4% | — |
| 平均時給(前年比) | +3.5% | +3.8% | +3.8% | — |
結果の詳細分析
業種別内訳——+17.8万人の正体
事実3月の雇用増加の中心はヘルスケア・社会福祉(+89.9k)だった。このうち外来医療サービスが+54.3k、医師診療所だけで+35.0k。2月に発生した医師ストライキ終了による職場復帰が主因であり、一過性の押し上げだ。
| 業種 | 2月 | 3月 | 前月差 |
|---|---|---|---|
| ヘルスケア・社会福祉 | ▲27.8k | +89.9k | +117.7k |
| 輸送・倉庫 | ▲48.5k | +21.0k | +69.5k |
| レジャー・接客 | ▲11k | +44k | +55k |
| 建設 | ▲13k | +26k | +39k |
| 製造業 | ▲6k | +15k | +21k |
| 金融活動 | +2k | ▲15k | ▲17k |
| 情報 | ▲21k | ▲3k | (悪化継続) |
| 連邦政府 | ▲4k | ▲18k | ▲14k |
考察ヘルスケア・輸送・レジャーの上位3業種は、いずれも2月に特殊要因(ストライキ・悪天候・季節性)で大きく落ち込んだ業種だ。この3業種だけで2月→3月の変化幅は+242kに達する。一方、建設(+26k)・製造(+15k)には2月の悪天候反動に加え、実需の回復が含まれている可能性もある。ただし情報(▲3k継続)・金融(▲15k)の弱さは構造的な傾向として注視が必要で、全体として「労働市場が急回復した」とは言い難い内容だ。
連邦政府雇用の継続的削減
事実連邦政府雇用は3月も▲1.8万人の減少。2024年10月のピーク以降、累計▲35.5万人(▲11.8%)に達している。なお政府閉鎖中の職員は給与支払い対象として「在籍扱い」でカウントされるため、実態はこの数字より厳しい可能性がある。
平均時給・労働時間
平均時給は$37.38(前月比+$0.09、+0.2%)。前年比は+3.5%と予想(+3.8%)を大きく下回り、2025年3月の+3.8%からも鈍化。週平均労働時間は34.2時間(▲0.1時間)とわずかに縮小した。
家計調査(Household Survey)
| 指標 | 2月 | 3月 |
|---|---|---|
| 失業率 | 4.4% | 4.3% |
| 失業者数 | 757.1万人 | 723.9万人 |
| 労働参加率 | 62.0% | 61.9% |
| 長期失業者(27週以上) | 189.9万人 | 182.1万人 |
| 求職意欲喪失者 | 36.6万人 | 51.0万人 |
| U-6(広義失業率) | 7.9% | 8.0% |
注意失業率4.3%への低下を額面通りに受け取るのは危険だ。同時に労働参加率が61.9%(▲0.1pt)に低下し、求職意欲喪失者が前月比+14.4万人と急増している。これは「仕事探しをあきらめた人が増えた結果、分母が縮小して失業率が下がった」という構造を示唆する。U-6(広義失業率)が8.0%に悪化していることも合わせると、表面の失業率が示す以上に労働市場の内側は軟化している可能性がある。参加率の低下と喪失者急増の組み合わせは、単月の振れではなく構造的な変化として今後も注視が必要だ。
改定値
| 月 | 旧値 | 改定値 | 修正幅 |
|---|---|---|---|
| 1月 | +12.6万人 | +16.0万人 | +3.4万人(上方) |
| 2月 | ▲9.2万人 | ▲13.3万人 | ▲4.1万人(下方) |
1・2月合計では▲7,000人の下方修正。なお発表前(事前予想段階)では2月は▲9.2万人として集計されており、▲13.3万人への改定は発表後に初めて判明した数字だ。
事前予想との検証
当ブログでは本日発表前に、Grokを使って事前予想を立てて公開していた。予想NFPは+5.8万人(コンセンサスも+6.0万人前後)と、市場平均とほぼ同じ水準だった。
Grok予想の振り返り結果は+17.8万人と約12万人の乖離。主な要因は2月の下方修正の反動と、ストライキ明けのヘルスケア復帰が予想以上に効いたことだ。発表前にここまで正確に織り込むのは正直難しかった——コンセンサスも同水準だったので「みんなで見誤った月」って感じ。ブロガーとしては毎回ピッタリ当てるのは無理ゲーだけど、こういう特殊月こそしっかり振り返って次に繋げたいと思います。
で、ゴールド(XAUUSD)どうなんだ
ヘッドラインのNFP+17.8万人は「強い雇用」として読まれやすいが、内容を精査すると話は変わる。
事実時給の前年比+3.5%は予想+3.8%を下回り、鈍化傾向を示した。ただし+3.5%はFedが目指す持続的インフレ目標(2%)と比較すれば依然として高い水準だ。Fedが重視する前月比の勢いは+0.2%とやや落ち着いたが、「賃金インフレが収束した」と判断するには早い。利下げを急かす根拠にはならないが、インフレ再燃を示す材料でもない——というのが正確な読み方だ。
考察「NFP表面上は強い・時給は弱い」という混在結果は、ゴールドにとってニュートラルからやや強気の材料だ。強いNFPがドル買い圧力になる一方、時給鈍化が実質金利の上昇を抑制するためだ。Good Fridayで米株が休場という特殊環境も、市場の反応が限定的になる要因として念頭に置きたい。
リスク次回(4月分)の雇用統計こそが本番だ。関税の影響が労働市場に本格的に波及するのは4月以降であり、3月データはいわば「嵐の前の静けさ」として位置づけられる。
- U.S. Bureau of Labor Statistics – The Employment Situation, March 2026(USDL-26-0580、2026年4月3日発表)
- BLS公式PDFリリース: https://www.bls.gov/news.release/pdf/empsit.pdf
※数値は季節調整済みデータを使用。速報値(p=Preliminary)を含む。最新の公式発表で必ずご確認ください。


数字だけ見ると「雇用強い!」ってなりがちだけど、内容は2月の反動がほとんど。時給もちゃんと鈍化してるしね。Fedからしても「まあまあ普通」って感じの煮え切らない結果でした。本番は次回の4月分。関税の影響がどう出るか、そこが勝負どころです。今月は「嵐の前の静けさ」くらいに思っておきましょう。