【LVMH決算】オーガニック+2%へ加速も、稼ぎ頭Fashionはコンセンサス未達で株価反転安
2026年7月29日|ぱぶちゃんのファンダメンタルlab
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LVMHの2026年上期(1〜6月)決算は、売上高386.4(398.1)億€・報告ベース3%減も、オーガニック(為替・M&A影響除く実質)ベースでは+2%、Q2単独では+3%(中東情勢の影響を除くと+4%)へと加速した。営業利益(Profit from recurring operations)は86.9(90.1)億€・4%減にとどまり、営業利益率は22.5%の高水準を維持。純利益(グループ持分)は56.97(56.98)億€とほぼ横ばいで着地した。セグメント別ではWatches & Jewelry(Tiffany・Bvlgari牽引)がQ2オーガニック+11%と二桁成長、稼ぎ頭のFashion & Leather Goodsも7四半期ぶりにQ2でプラス転換(+1%)したが、市場コンセンサス(Reuters報道によるVisible Alpha集計で約+1.7%)には0.7pt届かず。発表翌日(7/28)の欧州市場では寄り付きこそグループ全体の伸びを好感して+2%となったが、Fashion部門の未達が嫌気されて終値にかけて反転、-2.6%の454.8€まで下落した(Investing.com報道ベース、他媒体では下落幅の表現に若干のばらつきあり)。通期では会社側見通しとして、為替がEBITに約10億€の逆風となる見込みが示されており、下期も為替影響の継続が見込まれている。
📄 一次資料:LVMH 2026 First Half Results(プレスリリース・プレゼンテーション・中間財務報告書)
📋 目次
1|LVMHとはどんな会社か
LVMH Moët Hennessy Louis Vuitton SE(仏パリ本社)は、世界最大の高級ブランドコングロマリット。75以上のMaison(ブランド)を、Wines & Spirits・Fashion & Leather Goods・Perfumes & Cosmetics・Watches & Jewelry・Selective Retailing・Other activitiesの6セクター体制で展開する。主要ブランドはルイ・ヴィトン、クリスチャン・ディオール、Tiffany & Co.、Bvlgari、Sephora、モエ・エ・シャンドン、ヘネシーなど。2025年通期売上高は808億€、世界の店舗網は6,280店舗超。会長兼CEOはベルナール・アルノー氏。
2|主要財務ハイライト(H1・Q2、コンセンサス比較)
2026年7月27日(パリ市場引け後)、LVMHは2026年度上期(1〜6月期)決算を発表した。為替の逆風(グループ売上高への影響-5%)が報告ベースの数値を押し下げたが、オーガニックベースでは緩やかな回復基調が続いている。
| 指標 | H1 2026 | H1 2025 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 38,644百万€ | 39,810百万€ | -3%(オーガニック+2%) |
| 売上総利益率 (Consolidated Income Statement記載のGross margin/Revenueより算出) |
67.1% | 66.8%相当 | +30bp |
| 営業利益(Profit from recurring operations) | 8,691百万€ | 9,012百万€ | -4% |
| 営業利益率 | 22.5% | 22.6%相当 | 高水準維持 |
| 純利益(グループ持分) | 5,697百万€ | 5,698百万€ | 横ばい |
| EPS(基本) (Consolidated Income Statement Note 28) |
11.52€ | 11.43€ | +1% |
| Operating Free Cash Flow | 4,100百万€ | 4,032百万€ | +2% |
| 純有利子負債 | 8,245百万€ | 10,176百万€(25年末) | -19% |
| 自己資本 | 69,694百万€ | 66,875百万€(25年末) | +4% |
Q2単独ではグループ売上高195.2(195.0)億€・オーガニック+3%(中東情勢の影響を除くと+4%)。Reuters報道が伝える市場調査会社Visible Alpha集計のアナリストコンセンサスと概ね一致する着地となった。粗利益率67.1%(+30bp)は改善しており、為替の逆風を各事業グループの実質的なマージン改善(トップライン改善を背景とした)がほぼ相殺した格好。販管費もマーケティング・セリング費用が前年比-2%、G&Aは横ばいと、コスト規律が明確に効いている。実効税率は仏国内の付加課税の影響もあり30%の高水準が続いた。
EBIT(営業利益)ベースで見ると、オーガニックでは+4%程度の増益だったが、為替影響(約7億€のマイナス)がこれをほぼ帳消しにした構図。純財務損益はデリバティブコストの減少や保有金融投資の評価益拡大により、前年から約3億€改善している。
3|セグメント別動向(5事業グループ)
| セグメント(H1 2026) | 売上高 | オーガニック | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| Wines & Spirits | 2,598百万€ | +5% | 582百万€・+11% | 22.4%(+210bp) |
| Fashion & Leather Goods | 18,146百万€ | -1% | 6,195百万€・-7% | 34.1%(-60bp、為替要因) |
| Perfumes & Cosmetics | 3,914百万€ | 0% | 417百万€・-2% | 10.6%(+20bp) |
| Watches & Jewelry | 5,225百万€ | +9% | 831百万€・+9% | 15.9%(+90bp) |
| Selective Retailing | 8,406百万€ | +5% | 893百万€・+2% | 10.6%(小幅改善) |
Wines & Spirits:オーガニック+5%は主にボリューム増が牽引。内訳はChampagne & Winesが14億€・オーガニック+7%(Prestige Cuvéeの構成比改善が寄与、欧州・日本で加速)、Cognac & Spiritsが12億€・同+3%(米国需要は依然軟調ながら、中国でVSOP・XOともに数量が回復基調)。通期でも為替一定ベースでの成長は続く見通しだが、H1ほどのペースにはならないとの見方が示された。
Fashion & Leather Goods:H1はオーガニック-1%だったが、Q2は+1%へ転換し、7四半期ぶりのプラス成長となった。ルイ・ヴィトンは平均並み、ディオールは平均を上回る伸びで、特にディオールは米国・日本の顧客層が二桁成長するなど、Jonathan Anderson体制1年目の手応えが数字にも表れ始めている。ロロピアーナ・リモワは引き続き平均超の成長を継続し、セリーヌ・フェンディも前四半期比で改善が続く。営業利益率34.1%(-60bp)の低下は全て為替要因で、定額為替ベースではマージンはほぼ横ばいだったとされる。
Perfumes & Cosmetics:オーガニックは横ばい。歴史あるMaison(クリスチャン・ディオール香水、ゲラン)が堅調に推移する一方、選択的な流通戦略を優先する方針から積極的な数量拡大は志向しておらず、旅行小売(トラベルリテール)の逆風も続く。営業利益率は10.6%(+20bp)とわずかに改善。
Watches & Jewelry:Q2オーガニック+11%と全社で最も強い伸び。Tiffany・Bvlgariともに中盤10%台の成長で、Tiffanyは店舗改装が全体の約40%まで進捗し、アイコンライン「HardWear」が+75%、「Knot」も約+50%の伸びを記録。一方、腕時計単体のカテゴリーは依然小幅マイナスで、成長はジュエリーが牽引している構図。営業利益率15.9%(+90bp)。
Selective Retailing:Sephoraが米国・欧州・中東・中国など主要市場で好調を維持し、成長は既存店伸びと新規出店がほぼ半々の構成。ベルギー・クロアチア・アイルランドへの新規出店も継続した。一方、DFSの資産売却(後述)に伴うパリメーター影響がセグメント売上高に-3%、グループ全体のQ2成長率にも-1ptのマイナス寄与となっている。営業利益率10.6%とわずかに改善。
4|地域別動向(欧州・米国・日本・アジア・その他)
| 地域 | 売上構成比(H1) | 構成比の変化 | H1オーガニック成長率 |
|---|---|---|---|
| 欧州 (決算説明会コメントベース) |
25% | - | -1% |
| 米国 | 25% | - | +4%(Q2は+6%に加速) |
| 日本 | 8% | - | +5% |
| アジア(日本除く) | 29% | +1pt | +6%(最高、ただしQ2は減速) |
| その他(中東含む) | 13% | -1pt | 中東情勢の影響で軟調 |
米国はQ1時点では為替要因を主因に観光需要が伸び悩んでいたが、Q2にかけて現地需要の改善に加え、為替の潮目が変わったことで海外(観光)需要も上向き、+6%へ加速した。日本もアジア各国からの観光客の多様化(米国人・韓国人・中国人が揃って回復基調)を背景に堅調だった。
一方、アジア(日本除く)はH1全体では+6%と最も高い伸びだったものの、Q2は減速。経営陣によれば、アジア系顧客(中国本土・中華圏含む)の消費総額自体はQ1から横ばいで大きな変化はないが、消費する「場所」がアジア域内から欧州・日本へシフトしたことが背景で、これは欧州・日本のQ2加速と表裏一体の現象と説明されている。中国本土の消費については、ショッピングイベント(セールや記念日等)への集中傾向が強まっているとの言及があり、これが構造的な変化か短期的な現象かは経営陣も「まだ判断がつかない」としている。
欧州は観光需要の低迷を主因にH1通期では-1%(決算説明会でのCFOコメントベースの数値。プレスリリース本体では「good resilience」との定性表現にとどまる)だったが、Q2はアジアからの観光客回復もあり改善した。「その他」区分(中東含む)は中東情勢の影響を最も直接的に受けており、グループ全体の成長率をQ1・Q2それぞれ-1pt押し下げる要因となった。
5|財務体質・キャッシュフロー・為替影響
Operating Free Cash Flowは41.0(40.3)億€・+2%と底堅く推移。営業活動によるキャッシュフローはわずかに減少したものの、設備投資(Operating investments)の圧縮でこれを相殺した。純有利子負債は前年同期比で約20億€減少し、ギアリング(自己資本に対する純有利子負債比率)は12%(-3pt)に改善。上期末には自社株買いも実施しており、自己資本はわずかに増加した。上期の配当・自社株買い等の株主還元関連支出は財務活動によるキャッシュフローの主要な流出項目となっている。
為替影響は今回の決算全体を通じた最大の逆風で、H1の売上高を-5%押し下げたほか、EBITベースでも約7億€のマイナス寄与となった。会社側見通しとして、通期のEBITへの為替影響は約10億€(2025年とほぼ同水準)と見込まれており、H1だけで6億€超をすでに消化した計算になる。下期についても「同程度の規模の影響が続く」との見通しが示されており、特にWines & Spiritsは在庫の評価から実際の損益計上までにタイムラグがあるため、前年の為替変動の影響が下期にずれ込んで顕在化するとの説明があった。
なお、米国関税の一部について還付を受けたことが明らかにされているが、マージンへの効果は数ベーシスポイント程度にとどまり、為替のマイナス影響を相殺するには至っていない。
6|重要イベント(DFS資産売却・Marc Jacobs売却合意等)
- Marc Jacobs売却合意:WHP Globalとの間でMarc Jacobsの売却について合意。
- DFSの資産再編:中華圏事業をChina Tourism Group Duty Freeへ売却したほか、ロサンゼルス・サンフランシスコ両空港のコンセッション権をDuty Free Americasへ、DFS沖縄をAvoltaへ売却する契約を締結。これらのパリメーター影響がSelective Retailing部門の報告売上高を-3%押し下げ、グループ全体のQ2成長率にも-1ptのマイナス寄与となった。
- ルイ・ヴィトン:モノグラム誕生130周年を記念し、新コレクション「Monogram Emblème」を発売。北京・ソウルに新フラッグシップ店を開業したほか、ロンドンで期間限定ホテル企画が商業的に成功。
- クリスチャン・ディオール:Jonathan Anderson氏による最初のコレクションが本格始動。バッグ「Cigale」が好評で、東京にBamboo Pavilion、大阪にHouse of Diorを新規開業。
- ロロ・ピアーナ:新コレクション「Nomadic Reverie」を発表、レザーグッズに「Extra Softy Bag」を追加。
- Tiffany & Co.:Natalie Portman氏が新ブランドアンバサダーに就任。店舗改装は全体の約40%まで進捗。
- Bvlgari:新作「Eclettica」が過去最高売上を記録。「B.zero1 Mini」も好調な滑り出し。
- Sephora:ベルギー・クロアチア・アイルランドに新規出店。「Rhode」の独占取り扱いが引き続き好調。
- モエ・エ・シャンドン:F1公式シャンパンとして2シーズン目に突入。
- 訴訟関連:ルイ・ヴィトンと中国のお茶ブランドとの商標を巡る係争が話題となったが、経営陣は係争中を理由に詳細説明を控えており、財務的影響については言及がない。
7|通期2026見通し
LVMHは数値ベースの通期ガイダンスを開示しない方針を継続しており、今回も「地政学・経済環境の不確実性が続く中でも、各Maisonのブランド力強化に注力する」という定性的な見通しにとどまっている。中間配当は1株あたり5.50€で、2026年12月3日に支払われる予定。
決算説明会でのQ&Aからは、セグメント別に以下のような方向性が示された。
- Wines & Spirits:為替一定ベースでの成長は2026年通期も継続する見通しだが、H1ほどのペースにはならない。通期の営業利益率は前年並みを想定。
- Fashion & Leather Goods:四半期ごとの改善傾向が続くと見られるが、下期は「見かけ上」の比較のハードルが上がる(ただし2024年の比較対象自体が緩かったことの裏返しでもあり、実質的な難易度は「概ね同程度」との説明)。
- Watches & Jewelry:Tiffanyの店舗改装ペース(年10%超)は今後も継続する方針。
- Perfumes & Cosmetics:積極的な数量拡大より、選択的流通とブランドエクイティ重視の戦略を継続。
- Selective Retailing:Sephoraは既存店・新規出店の両輪での拡大を継続。
- 為替:会社側見通しとして、通期のEBITへの逆風は約10億€(2025年並み)を想定、下期も同程度の影響が続く見込み。
8|リスク・注視すべきポイント
⚠️ 決算資料・決算説明会から読み取れる留意点
①為替の逆風が通期でも継続する見通しで、下期もEBITへの下押し圧力が残る(Wines & Spiritsは在庫評価のタイムラグでさらに遅れて影響が顕在化)
②中東情勢はQ1からQ2にかけて悪化幅こそ縮小したが、四半期末時点でも依然マイナス基調が続いており、先行きは経営陣自身も「不透明」と認めている
③中国本土・中華圏の消費がショッピングイベントに集中する傾向が強まっており、これが構造変化か一時的現象か見極めが必要
④稼ぎ頭のFashion & Leather Goodsは7四半期ぶりにQ2でプラス転換したものの、Watches & Jewelryとの成長率格差(約10pt)はなお大きく、持続的な回復の確認にはもう数四半期を要する可能性
⑤Perfumes & Cosmeticsはトラベルリテールの逆風が継続的な重荷
⑥Tiffanyの店舗改装や地金コストが近視眼的にはマージンの重石となる可能性(会社側は長期的な効果を強調)
⑦ルイ・ヴィトンと中国のお茶ブランドとの商標係争は係争中で財務影響が未確定
9|株価反応(発表翌日の初動プラス→終値マイナスの反転)
決算はパリ市場引け後の7月27日(月)夜に発表された。翌7月28日(火)の寄り付きは、Q2グループオーガニック成長率+3%がVisible Alpha集計のコンセンサスと概ね一致したことが好感され、LVMH株は+2%で始まった。競合のKering・Hermès・L'Oréalも同様に+2〜3%、Rémy Cointreauが+1.8%、Pernod Ricardが+3.5%と、フランス高級ブランド・酒類株全体が連れ高となる場面もあった。
しかし、その後は次第に売りが優勢となり、終値にかけて反転。グループ利益の大部分を稼ぐFashion & Leather GoodsのQ2実質伸び率(+1%)がアナリストコンセンサス(約+1.7%)に0.7pt届かなかったことが嫌気され、株価は454.8€まで-2.6%の下落で着地した。この日のCAC40指数は+0.5%、欧州STOXX600指数も+0.2%とプラス圏で推移しており、LVMH単独の反落は市場全体の地合いというより、個別企業要因(Fashion部門の未達)によるところが大きいとみられる。発表翌日にRBC・Morgan Stanley・UBSなど複数の証券会社が目標株価を引き下げた。株価は年初来で約30%安となっており、6年ぶりの安値圏での推移が続く。
なお、米OTC市場に上場するADR(LVMHF)では、決算発表当日の時間外で+1.1%という比較的穏やかな反応にとどまっており、この違いは取引時間帯やADRとパリ本国株の流動性の差によるものとみられる。
出典
- LVMH Moët Hennessy Louis Vuitton「Accelerating growth in the second quarter - Solid first-half results」(2026年7月27日公表プレスリリース、Interim Financial Report含む)
- 参照ページ:Financial highlights/Revenue and Profit from recurring operations by business group/Consolidated Income Statement・Balance Sheet・Cash Flow Statement等
- LVMH Investors「2026 First Half Results」特設ページ(lvmh.com、決算説明会プレゼンテーションを含む)
- Investing.com「Earnings call transcript: LVMH posts solid H1 2026 growth as margins hold firm」(2026年7月27日付、決算説明会トランスクリプト)
- 株価反応・アナリスト格付け変更:Investing.com「Why is LVMH stock sliding today?」、Invezz「LVMH shares drop 2.56% after second-quarter sales report」、MarketScreener「LVMH shares open up after quarterly results」(いずれも2026年7月28日付)
- Visible Alphaコンセンサス言及:Reuters「LVMH shares open up after quarterly results」(2026年7月28日付、MarketScreener配信経由)
✍️ 執筆者/ぱぶちゃん|投資歴6年/ぱぶちゃんのファンダメンタルlabを事実ベースで解説するブログを運営中。相場の「なぜ?」を一緒に考えましょう。ナンピンは得意です。/X(旧Twitter):@pablo29god
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