【中学生でもわかる】ハイリキ(Hyperliquid)とは?株価指数もドル円も取引できる「お金を預かる会社がいない取引所」の仕組みとリスク
最近、投資の世界で「ハイリキ」という言葉をよく見かけるようになりました。正式名称は「Hyperliquid(ハイパーリキッド)」。暗号資産(仮想通貨)の世界で生まれた取引所ですが、いまではアメリカの株価指数や日経平均、ドル円まで取引できるようになっています。
この記事では、「そもそも何なの?」「なぜ人気なの?」「何が危ないの?」を、中学生にもわかる言葉で解説します。むずかしい言葉は、そのつどたとえ話でかみくだいていきます。
🏪 1. ハイリキってなに?
ひとことで言うと、ハイリキは「お金を預かる会社がいない取引所」です。
ふつうの取引所(証券会社やFX会社)は、店員さんのいるお店のようなものです。お客さんはお金をお店に預け、店員さんが注文を受けて売り買いを成立させます。もしお店がつぶれたり、店員さんが悪いことをしたりすると、お客さんが困ってしまいます。
これに対してハイリキは、自動販売機に近いイメージです。お金は自分の財布(ウォレット)に置いたまま参加し、売り買いの成立は決められたルールどおりにプログラムが自動で行います。こうした取引所を「DEX(デックス/分散型取引所)」と呼びます。
📌 かんたん用語
ウォレット:暗号資産を入れておくデジタルの財布。自分だけが持つ「鍵」で管理します。
ブロックチェーン:みんなで同じ記録を共有する、改ざんしにくい台帳(ノート)のようなしくみです。
板(いた):「いくらで買いたい人が何人」「いくらで売りたい人が何人」という注文の一覧表のことです。
ハイリキのすごいところは、DEXなのに、ふつうの取引所と同じように「板」を見ながら取引できることです。これを実現するために、取引専用の高速なブロックチェーンを自分たちで作ってしまいました。「自動販売機なのに、証券会社並みのスピードと使いやすさ」というところが人気の理由のひとつです。
🎢 2. 「パープ」と「レバレッジ」ってなに?
ハイリキで一番人気の商品が「パープ」です。正式には「無期限先物(パーペチュアル・フューチャーズ)」といいます。
先物取引とは、「将来のある日の値段で売り買いする約束」のことです。ふつうの先物には「◯月◯日に精算」という期限がありますが、パープには期限がありません。だから「無期限」と呼ばれます。ものそのものを買うのではなく、「これから値上がりするか、値下がりするか」に賭けるイメージです。
もうひとつの特徴が「レバレッジ」です。レバレッジは「てこ」という意味で、少ないお金で大きな金額の取引ができます。
| 預けたお金 | レバレッジ | 取引できる金額 | 価格が10%下がると |
|---|---|---|---|
| 1万円 | なし(1倍) | 1万円分 | 1,000円の損 |
| 1万円 | 10倍 | 10万円分 | 1万円の損(預けたお金が全部なくなる) |
値上がりすれば、少ないお金で大きな利益になります。でも値下がりしたときは、損も同じように大きくなります。損が預けたお金に近づくと、自動的に取引が強制終了される「強制決済(ロスカット)」も起こります。ハイリキでは数十倍のレバレッジもかけられる市場があり、ほんの少しの値動きで大きな損をすることがあります。
🪙 3. なぜ人気なの?「HYPE」と買い戻しのしくみ
ハイリキには、独自のコイン「HYPE(ハイプ)」があります。
ハイリキは、取引のたびに受け取る手数料を使って、市場からHYPEを買い戻しています。会社にたとえるなら「もうけたお金で自分の会社の株を買う(自社株買い)」に近いしくみです。取引が増える→手数料が増える→HYPEの買い戻しが増える、という流れがわかりやすいことが、投資家に注目される理由のひとつです。ある予測モデルでは、2026年の年間収益を約1億9,300万ドル、HYPEの1日あたりの買い戻しを約52万7,000ドルと見積もっています(あくまで予測で、実際の数字は変わります)。
| 時期 | HYPEの値段(目安) | 出来事 |
|---|---|---|
| 2024年11月 | 約3ドル | ローンチ(公開) |
| 2025年9月 | 約59ドル | それまでの高値をつける |
| 2026年初め | 25〜33ドル前後 | 一時、大きく値下がり |
| 2026年5月 | 約61.9ドル | ビットコインなどが弱い中、年初から約147%上昇と報道 |
| 2026年9月18日 | 約85〜90ドル | HYPEなどを担保にUSDC・USDTを借りられる機能の開始が話題に(この前後から高値の更新が続く) |
| 2026年9月23日 | 約98ドル | この1週間で高値の更新が続き、9/23に約98ドル(集計元により97.9〜98.0ドル前後) |
9/18に最高値を更新したあとも上昇が続き、9/23には約98ドルの過去最高値をつけました。その後はやや押し戻され、9/28時点では90ドル台前半で推移しています(価格は日々変動します)。
わずか2年足らずで約30倍。夢のある話に見えますが、途中で半分近くまで下がった時期もあります。値動きがとても激しいコインだということは忘れないでください。ちなみに、暗号資産全体の最近の動きはビットコイン連載のその後の記事でまとめています。
🌐 4. 株価指数もドル円も!「HIP-3」という新しいしくみ
ここ1年でハイリキを大きく変えたのが、2025年10月13日に始まった「HIP-3(ヒップスリー)」というしくみです。
これは、条件を満たせば誰でも、ハイリキの上に新しい市場(パープ)を作れるというルールです。条件は「HYPEを50万枚預けること」です(HYPEの値段によって変わりますが、いまは日本円で数十億円規模)。市場の運営で問題を起こすと、預けたHYPEが減らされる(没収される)しくみもあり、運営者にも大きな責任がかかっています。
このしくみを使って、trade.xyz(トレード・エックスワイジー)などの運営者が、暗号資産以外の市場を次々に作りました。いまでは次のようなものが取引できます。
| 種類 | 取引できるものの例 |
|---|---|
| 株価指数 | S&P500、ナスダック100型の指数、日経225、韓国KOSPI200 |
| 為替 | ドル円、ユーロドル |
| 商品 | 金(ゴールド)、銀、原油(WTI・ブレント)、銅、天然ガス |
| 個別株 | エヌビディア、テスラ、アップルなど |
| 金利 | 金利に関する市場を扱う運営者もあります |
特にS&P500は、指数を作っている会社(S&P Dow Jones Indices)とtrade.xyzがライセンス契約(使用許可の契約)を結んだうえで市場が作られました。伸び方も急で、HIP-3がハイリキ全体のパープの取引量に占める割合は、2026年の初めの約2%から、7月ごろには多い日で約半分にまで拡大したと報じられています(比率は日々変わります)。暗号資産の取引所が、いつのまにか「世界の相場をまとめて取引できる場所」になりつつあるのです。
📌 土曜日も日曜日も動いている
東京証券取引所もニューヨークの取引所も、週末はお休みです。でもハイリキの日経225やS&P500は休まず値段がつきます。そのため「月曜の朝に相場がどう始まりそうか」を予想する手がかりとして見る人も増えています。ドル円も、日銀や政府の発言が週末に出たときに反応を見られる点が売りにされています。
💵 5. お金は何でやりとりするの?「ステーブルコイン」
ハイリキでは、円やドルを直接入れるのではなく、「ステーブルコイン」というデジタルのお金を使います。
ステーブルコインは「1枚=だいたい1ドル」になるように作られたコインです。ゲームセンターのメダルのように、「1枚=1ドル分」と決めて使うイメージです。代表的なものにUSDC(ユーエスディーシー)とUSDT(テザー)があります。
ハイリキでは基本的にUSDCが使われます。入金は、アービトラムという別のブロックチェーンからUSDCを送り込む形で行い、損益や手数料もUSDCで精算されます。つまり、まず別の取引所などでUSDCを用意して、それをウォレット経由でハイリキに送る流れです。
実は2025年にハイリキ独自のステーブルコイン「USDH」も作られたのですが、あまり広まりませんでした。提携が発表された時点で、USDCの供給が約50.8億ドルなのに対し、USDHは最大でも約1億200万ドル。結果として2026年5月、CircleとCoinbaseとの提携によりUSDCが公式の基軸通貨となり、USDHは役目を終えることになりました。CircleとCoinbaseはそれぞれ50万HYPEをステークし、ハイリキ上のUSDCの準備金がうむ利回りの90%をプロトコルに還元すると約束しています。
HIP-3の市場は運営者ごとに使うステーブルコインが決まっていて、S&P500などを扱う大手の運営者はUSDCですが、USDTの仲間(USDT0)やUSDeを使う運営者もいます。
📌 アメリカの金利ともつながっている
USDCの裏付けには、主にアメリカの国債など安全な資産が使われていて、金利がつきます。その利息の一部がハイリキ側に入ってくるしくみなので、アメリカの金利が高いほど、ハイリキの収入に上乗せが生まれます。「アメリカの金利 → USDCの準備金の利息 → ハイリキ → HYPEの買い戻し」というつながりがあるのです。
⚖️ 6. 日本のFX・CFDと何が違うの?
「ドル円や日経平均なら、日本のFX会社やCFDでも取引できるよね?」と思った人もいるでしょう。取引できるものは似ていても、裏側のルールはまったく違います。
| 項目 | 日本のFX・CFD(国内業者) | ハイリキ(DEX) |
|---|---|---|
| 運営 | 金融庁の登録を受けた国内の業者 | 国内の登録業者ではない、海外・分散型のサービス |
| レバレッジの上限 | 法律で決まっている(FXは最大25倍など) | 日本の法律による上限はなく、市場ごとに運営者が設定(数十倍の例もある) |
| 預けたお金の守られ方 | 業者が破綻しても守られるしくみ(信託保全)がある | 自分のウォレットで管理。ハッキングやプログラムの不具合による損は自分で負う |
| 本人確認 | 必要 | 基本的に不要 |
| 税金 | 利益に約20%(20.315%)の分離課税。損は3年繰り越せる | 暗号資産の扱いで、ほかの所得と合算する総合課税(最大55%)になると考えられる。損の繰り越しなし |
| 週末の取引 | 基本的にできない(一部例外あり) | 24時間365日できる |
| 困ったとき | 日本の法律で守られ、相談先もある | 日本の法律の保護は期待しにくい |
特に税金の違いは大きいです。日本では暗号資産の税金を分離課税(20%)にする方向で法律の改正が進んでいますが、対象になるのは国内の登録業者が取り扱う暗号資産の取引が中心で、海外の無登録業者やDEXでの取引は引き続き総合課税のままとされています。くわしくは日本の暗号資産規制の記事にまとめています。実際に取引する大人の人は、必ず税理士などの専門家に確認してください。
⚠️ 7. 知っておきたい5つのリスク
① レバレッジで一瞬で資金がなくなるリスク
少しの値動きで、預けたお金が全部なくなることがあります。強制決済は待ってくれません。
② ステーブルコインが1ドルでなくなるリスク
2023年にアメリカの銀行(シリコンバレー銀行)が破綻したとき、USDCが一時的に1ドルを下回ったことがあります。「ステーブル(安定)」という名前でも、絶対ではありません。ハイリキは基軸通貨をUSDCに一本化したので、発行元のCircleと入金ルート(ブリッジ)にリスクが集まるという面もあります。
③ ハッキングやプログラムの不具合のリスク
お金を預かる会社がいない代わりに、プログラムに穴があれば、誰も補償してくれません。
④ 規制が変わるリスク
本人確認なしで、株価指数などのレバレッジ取引ができるしくみは、各国の法律とぶつかりやすく、今後ルールが大きく変わる可能性があります。日本では海外の無登録業者が日本の利用者向けに営業すること自体が規制の対象で、2026年には大手の海外取引所が日本向けサービスを終了する動きも出ています。アメリカでも、暗号資産の包括法案(クラリティ法案)が9月15日に上院で否決されるなど、ルール作りは途上です(くわしくはこちら)。
⑤ 見た目ほど市場が厚くない、週末は元の市場が閉まっているリスク
2025年10月、立ち上げから約2週間後のナスダック100型のパープは、1日の取引量が約7,200万ドルでした。一方、元になったCMEのナスダック100先物は、2025年10月2日に1日で2,250億ドル超。日付は少しずれますが、当時の比較として約3,000倍の差があります(その後ハイリキ側も大きく伸びましたが、本家との差は大きいままです)。また、S&P500のパープでは、立ち上げ初期に上位10ウォレットが取引量の58%、上位50ウォレットで73%を占めていたという分析があります。週末の値動きは「世界中の投資家の考え」ではなく「一部の人たちの動き」かもしれません。さらに、元の市場が閉まっている時間帯もパープは動き続けるため、値段が元の指数からズレやすくなります。S&P500やナスダック100型は基準価格からのズレが小さい一方、原油などでは大きめのズレが報告されています。また、元になる株や指数が動いていない週末は、値段を保つ手がかりが「指標価格」と「資金調達料」というしくみだけになります。The Blockは、この方式は株のような資産ではまだ実績が浅いと指摘しています。週末に急な値動きが起きても、それを一時的に止めるしくみ(サーキットブレーカー)がない点にも注意が必要です。
📌 8. まとめ
- ハイリキは「お金を預かる会社がいない」新しいタイプの取引所(DEX)
- 人気商品は期限のない先物「パープ」で、高いレバレッジがかけられる
- HIP-3によって、株価指数・ドル円・金・原油なども取引できるようになった
- お金のやりとりは主にステーブルコインのUSDC
- 取引できるものは日本のFX・CFDと似ていても、法律・税金・安全性のルールはまったく別物
ハイリキは「金融の新しい形」として注目されています。ただ、しくみを知ることと、実際にお金を入れることは、まったく別の話です。まずは「どう動いているのか」を知ることから始めてみてください。
📖 9. あわせて読みたい
- ビットコイン連載その後|半年で何が起きたか、これからの見方【2026年9月】
- 日本の暗号資産規制はどこまで進んだか|金商法改正・分離課税・ETFの現状【2026年9月】
- クラリティ法案が米上院で否決|争点と今後の道筋【2026年9月】
📚 主な出典
- The Block『Hyperliquid's HIP-3 markets surge to nearly 50% of perp volume as onchain stock trading grows』(2026年7月13日)|記事リンク
- CoinGecko『Hyperliquid's HIP-3 & HIP-4: Tokenized Stocks and Prediction Markets』(2026年5月7日)|記事リンク
- Nansen『What Is HIP-3? Hyperliquid's Permissionless Markets』(2026年7月8日)|記事リンク
- Unchained『HIP-3 Records $500 Million in Daily Volume』(2025年11月27日)|記事リンク
- MEXC News(BitcoinEthereumNews転載)『Tokenized Nasdaq Futures Enter Top 10 by Volume on Hyperliquid』(2025年10月)|記事リンク
- CoinMarketMan『S&P 500 Perpetual Futures: How HIP-3 Brings Equities to Hyperliquid』(2026年)|記事リンク
- Arrakis Finance『Can Hyperliquid Predict the S&P 500?』(2026年3月のデータに基づく分析)|記事リンク
- Hyperliquid Guide『Trade Stocks and Commodities on Hyperliquid: How XYZ Equity Perps Work』(2026年6月23日)|記事リンク
- Hyperliquid Guide『Hyperliquid Stock Perps Tracking Error』(2026年9月22日)|記事リンク
- Hyperdash『Nikkei 225 (JP225) Price, Chart & Trading』(2026年7月15日)|記事リンク
- Circle公式X『USDC will become an Aligned Quote Asset on Hyperliquid』(2026年5月14日)|投稿リンク
- KuCoinニュース『Hyperliquid Partners with Circle and Coinbase to Align USDC as the Quoting Asset』(2026年5月)|記事リンク
- Across『What Can You Do With Stablecoins on Hyperliquid?』(2026年5月14日追記)|記事リンク
- CoinGape『Hyperliquid Launches USDC and USDT Manual Borrows Against HYPE & Bitcoin』(2026年9月18日)|記事リンク
- Coinbase『Hyperliquid (HYPE) Price』(閲覧日:2026年9月28日、最高値は2026年9月23日)|価格ページ
- CoinGecko『Hyperliquid Price: HYPE/USD Live Price Chart』(閲覧日:2026年9月28日)|価格ページ
- 24/7 Wall St.『Why Is Hyperliquid Up Today?』(2026年9月21日)|記事リンク
- Pluang(CryptoTicker引用)『Hyperliquid (HYPE) surges 147% in 2026』(2026年5月21日)|記事リンク
- Pluang(Crypto Briefing引用)『Hyperliquid projected to earn $193M in 2026』(2026年9月6日)|記事リンク
- Nasdaq.com(The Motley Fool)『Prediction: This Cryptocurrency Could Soar 80% in 2026』(2026年)|記事リンク
- HypeTrad『HIP-3 Dashboard』(閲覧日:2026年9月28日)|ダッシュボードリンク
- 当ブログ『日本の暗号資産規制はどこまで進んだか』『クラリティ法案が米上院で否決』(いずれも2026年9月22日)※上記「あわせて読みたい」のとおり。なお、数値や価格は各媒体の掲載時点のもので、日々変動します。
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