財務省が2026年6月17日に発表した5月分貿易統計(速報)は、エネルギー輸入総額こそ前年比▲1.8%とほぼ横ばいだが、その中身が完全に入れ替わった月として記録されることになる。中東からの原油は数量▲61.9%、中東揮発油は数量▲90.0%。一方で米国からの揮発油は数量+565.9%(6.6倍)、米国LNGは数量+43.1%と本物の構造シフトが始まった。そして見落とされがちな変化がある——LNG輸入の減少分を石炭(数量+11.8%、一般炭+14.1%)の増加が補っている。脱炭素政策との矛盾が、貿易統計の数字に静かに刻み込まれた。
また本記事では、需給を一次情報のみで計算できる4月の数字もあわせて分析した。4月の原油輸入量は4,480千KL(前年比▲63.7%)。備蓄から6,430千KLを放出して合計10,910千KLを確保したが、前年4月の12,341千KLには届かず▲11.6%の不足が残った。輸入揮発油も▲37.7%、LNGも▲20.6%と、原油以外の燃料も軒並み減少。輸入減少分を完全には補えていない——備蓄放出は緊急避難であり、構造的な解決ではない。
② 米国鉱物性燃料2倍超、揮発油6.6倍——平時の2025年5月との比較で見える本物の代替
③ LNG数量▲15.1%を石炭数量+11.8%で埋める——政府が解除した石炭火力稼働制限の痕跡
④ 4月:原油輸入+備蓄放出の合計でも前年比▲11.6%——輸入が減った分だけ足りない
1. 5月貿易統計——総額▲1.8%の裏で何が起きているか
📌 前回記事:【2026年05月】ナフサ輸入量が半減・価格は最高値——代替調達の「3つの壁」を貿易統計で読む(4月分貿易統計の分析)
財務省が2026年6月17日に公表した令和8年5月分貿易統計(速報)は、見出し数字だけを追っていると見えない変化を内包している。
貿易収支の全体像から確認しよう。輸出総額は9兆5,116億円(前年比+17.0%)、輸入総額は9兆8,902億円(同+12.5%)、差引は▲3,787億円の赤字で、前年の▲6,625億円から赤字幅が42.8%縮小した。輸出の好調が目立つが、本記事ではエネルギー輸入の構造変化に焦点を絞る。
| 品目 | 2025年5月 | 2026年5月 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 鉱物性燃料 総額 | 1兆6,309億円 | 1兆6,023億円 | ▲1.8% |
| 原油 数量(千KL) | 11,057 | 4,727 | ▲57.3% |
| 原油 金額 | 7,546億円 | 5,392億円 | ▲28.5% |
| 石油製品 金額 | 1,989億円 | 2,911億円 | +46.4% |
| 揮発油 数量(千KL) | 2,115 | 1,825 | ▲13.7% |
| 揮発油 金額 | 1,380億円 | 2,324億円 | +68.5% |
| LNG 数量(千トン) | 4,664 | 3,960 | ▲15.1% |
| LPG 数量(千トン) | 812 | 679 | ▲16.4% |
| 石炭 数量(千トン) | 10,324 | 11,541 | +11.8% |
| 一般炭 数量(千トン) | 5,786 | 6,601 | +14.1% |
ここから見える構造は一つだ。エネルギー輸入の総額は変わっていない——しかし原油を諦めて精製済みの石油製品で買い、LNGを石炭で埋めている。数字の上では平穏に見えるが、その中身はかつてないほど大きく動いた月だった。
2. 4月の需給バランス——一次情報で計算できる唯一の月
「石油は足りているのか」——この問いに一次情報だけで答えられる月が一つある。4月だ。財務省の2025年4月(確々報)と2026年4月(9桁速報)、そして資源エネルギー庁「石油備蓄の現況」の3月末・4月末PDFが揃っており、輸入量・備蓄変化・前年比を推計なしで計算できる。
まず構造を整理する。原油は輸入して国内製油所で精製し、ガソリン・灯油・軽油・ナフサ等を作る。輸入揮発油(ガソリン)はその補完だ。したがって原油輸入が減れば国内精製量が落ち、精製品の供給が減る。輸入揮発油が減ればさらに追い打ちをかける。備蓄放出は原油の穴を埋めるが、放出された原油も製油所で精製して初めて使える。
| 品目 | 2025年4月 | 2026年4月 | 前年比 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 原油 輸入量 | 12,341千KL | 4,480千KL | ▲63.7% | 財務省貿易統計PDF |
| 備蓄放出量(4月) | — | +6,430千KL | — | 資源エネルギー庁PDF(3月末→4月末差分) |
| 原油 供給量合計(輸入+備蓄放出) | 12,341千KL | 10,910千KL | ▲11.6% | |
| 揮発油 輸入量 | 2,453千KL | 1,528千KL | ▲37.7% | 財務省貿易統計PDF |
| LNG 輸入量 | 5,374千トン | 4,269千トン | ▲20.6% | 財務省貿易統計PDF |
| LPG 輸入量 | 756千トン | 815千トン | +7.8% | 財務省貿易統計PDF |
| 石炭 輸入量 | 12,026千トン | 12,118千トン | +0.8% | 財務省貿易統計PDF |
この表から読み取れる構造は明確だ。
原油は備蓄放出で不足を補った——しかし前年比▲11.6%の差は残った。輸入が4,480千KLに激減したところへ備蓄から6,430千KLを放出し、合計10,910千KLを確保した。前年の12,341千KLには届かず、▲1,431千KLの不足だ。この差は、国内製油所に届く原油の減少となり、結果として精製量の低下につながる。
揮発油(ガソリン)は国内精製減+輸入減のダブル減少。原油が減れば製油所からの精製ガソリンも減る。加えて輸入揮発油も前年比▲37.7%と大幅に減少した。原油の穴は備蓄放出でかなり埋めたが、精製品の供給不足は避けられない。輸入揮発油▲37.7%、備蓄放出込みの原油供給▲11.6%——この二重の減少が製造現場に直撃した数字が、石油化学工業協会が発表した4月のエチレン生産設備稼働率67.3%(過去最低更新)だ。なお石化協によれば、製品在庫の取り崩しにより主要樹脂の出荷水準は維持されたとしているが、それは在庫が支えている間の話に過ぎない。
LNGも▲20.6%、石炭はほぼ横ばい。原油以外のエネルギーも総じて減少傾向にある中、石炭だけが前年比+0.8%と維持されているのは、電力会社がLNGの代替として石炭火力の稼働を増やしているためだ。
産油国共同:175万KL → 19万KL(▲156万KL・ほぼ消滅)
民間備蓄 :2,295万KL → 2,368万KL(+73万KL・微増)
※産油国共同備蓄(UAEなど産油国が日本国内タンクに預けていた原油)はほぼ消滅。今後このバッファーは使えない。民間は義務基準引き下げ(70→55日)にもかかわらず微増——代替調達で在庫を積んだ可能性。
輸入が減れば、その分だけ供給余力も失われる。備蓄放出はその差を相当程度縮めたが、完全ではない。そして備蓄は有限だ。4月1ヶ月だけで6,430千KLを取り崩した。5月以降も同じペースが続けば、残高の急減は避けられない。
3. 中東——崩壊の規模(前年同月比・数量ベース)
2026年2月28日のホルムズ海峡事実上の封鎖から約3ヶ月。5月統計は、前年同月(2025年5月)との直接比較で、封鎖の影響を定量化する数字を初めて揃えた。3月分は封鎖前に海峡を通過した船舶の分が計上されており過小評価があった。4月分で「猶予」が消え、5月分でその状態が定着したことが確認された。
| 品目(対中東) | 2025年5月 | 2026年5月 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 中東 総輸入額 | 8,988億円 | 5,153億円 | ▲42.7% |
| 中東 原油 数量(千KL) | 10,409 | 3,967 | ▲61.9% |
| 中東 原油 金額 | 7,108億円 | 4,458億円 | ▲37.3% |
| 中東 揮発油 数量(千KL) | 1,358 | 136 | ▲90.0% |
| 中東 LNG 数量(千トン) | 463 | 129 | ▲72.1% |
注目すべきは中東揮発油の数量が▲90.0%という水準だ。平時の10分の1しか入ってきていない。原油の▲61.9%よりもさらに深刻な落ち込みで、中東から精製済みの石油製品を調達するルートが事実上機能していないことを示している。
中東からの鉱物性燃料は合計4,711億円(▲44.0%)。2025年通年で中東からの輸入は11兆5,398億円だったことを踏まえると、月平均9,616億円だった輸入額は5,153億円へ縮小し、ほぼ半減した状態が続いている。
4. 米国——本物の構造シフト、揮発油は6.6倍
「代替調達が進んでいる」という言葉は4月から繰り返されてきたが、5月統計で初めて前年同月比での数量比較が可能になった。その変化は、数字として確認できる水準に達している。
| 品目(対米国) | 2025年5月 | 2026年5月 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 米国 鉱物性燃料 総額 | 1,643億円 | 3,367億円 | +104.9% |
| 米国 原油 数量(千KL) | 465 | 576 | +23.9% |
| 米国 原油 金額 | 308億円 | 704億円 | +128.8% |
| 米国 揮発油 数量(千KL) | 85 | 566 | +565.9%(6.6倍) |
| 米国 揮発油 金額 | 56億円 | 735億円 | +1,222.4% |
| 米国 LNG 数量(千トン) | 473 | 677 | +43.1% |
| 米国 LPG 数量(千トン) | 654 | 654 | ±0.0% |
揮発油の数量が6.6倍という数字は際立っている。平時の2025年5月には85千KLだったものが566千KLへ。中東揮発油が90%減少したことへの代替調達が、米国からの精製済み石油製品という形で一気に立ち上がった。
一方で米国LPGは前年同月比±0.0%だった点も注目に値する。LPGは2025年5月時点で既に米国から654千トンを調達しており、平時から相当量を依存していた。言い換えれば、米国LPGはすでに天井圏に達していたため、封鎖後の追加増量の余地が乏しい構造だった。
また、背景として2026年3月の日米首脳会談でアラスカ原油の増産協力が合意されたことがある。ただし足元の数量効果については後述する(8章)。
5. 「韓国精製品ルートが代替の柱」は数字と合わない
封鎖以降のメディア報道では「韓国製油所経由の精製品」が代替調達の主力として繰り返し登場した。しかし5月統計の数字はその見方を支持していない。
| 品目(対韓国) | 2025年5月 | 2026年5月 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 韓国 鉱物性燃料 総額 | 576億円 | 627億円 | +8.9% |
| 韓国 揮発油 数量(千KL) | 470 | 255 | ▲45.7% |
| 韓国 揮発油 金額 | 334億円 | 352億円 | +5.4% |
韓国からの揮発油は数量で▲45.7%と半減以下だ。金額が+5.4%と微増しているのは単価高騰の影響であり、物量としては大幅に減少している。「韓国精製品ルートが代替の柱」は、少なくとも5月の貿易統計とは整合しない。4月統計(韓国石油製品+224.3%)が注目されたが、それは3月→4月の特殊事情によるものであり、5月には正常化(むしろ後退)している。
韓国製油所自体も中東産原油を主原料としており、ホルムズ封鎖の影響から無縁ではない。韓国が日本向けに追加精製できる能力には構造的な限界がある。
6. ASEAN——LNG構造シフトの始まり(JERA-ペトロナス契約)
ASEANからの鉱物性燃料輸入は+115.6%(前年比)と大幅増に見えるが、これはベース効果が相当程度含まれている。2025年5月のASEAN LNGは前年比▲57.4%と異常に低かった月であり、反動増が+115.6%の一因だ。
| 品目(対ASEAN) | 2025年5月 | 2026年5月 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| ASEAN 鉱物性燃料 総額 | 813億円 | 1,753億円 | +115.6% |
| ASEAN LNG 数量(千トン) | 641(前年比▲57.4%) | 899 | +40.2% |
| ASEAN 揮発油 数量(千KL) | 56 | 109 | +94.6% |
| ASEAN 石炭 数量(千トン) | 1,113 | 1,641 | +47.5% |
それでも2025年5月の異常低水準(前年比▲57.4%)を踏まえると、2026年5月の899千トンは実需の拡大も含んでいる。そしてこの動きを構造的に裏付けるニュースが、5月統計の発表直前に出た。
国内最大の火力発電会社JERAがマレーシア国営石油ペトロナスと、年間最大200万トンのLNG売買契約を締結。契約期間は2028年から20年間。現在の調達量は年間36万トンで、その約5.6倍規模に拡大する。日本との地理的近接性と地政学リスク分散の観点から選定されたとされる。
2028年開始という点は重要で、現時点ではまだ物量として貿易統計に出てくる段階ではない。しかしこの契約は、5月統計に現れたASEAN LNG拡大が一時的なものではなく、日本のエネルギー調達構造の長期的な地殻変動の始まりであることを示している。
7. LNGを石炭で埋める「静かな逆行」
この記事で最も注目したい変化がここにある。ほとんど報道されていないが、LNG数量が前年同月比▲15.1%(3,960千トン)減少し、石炭数量が+11.8%(11,541千トン)増加している。
| 比較 | 数量変化 | 金額変化 |
|---|---|---|
| LNG(前年比) | ▲15.1%(▲704千トン) | ▲3.0% |
| 石炭(前年比) | +11.8%(+1,217千トン) | +43.7% |
| 一般炭(前年比) | +14.1%(+815千トン) | +47.3% |
この構図が意味することは明確だ。カタールLNGの▲72.1%(中東LNG数量)という大幅減少を、豪州・インドネシアなどからの石炭が補っている。
石炭に有利な点が一つある——調達先が中東に依存していない。豪州産石炭は日本のLNG消費量の約80%を供給する豪州・インドネシアと同様、ホルムズ海峡を通らないルートで調達できる。物理的な「安全な選択肢」として機能している。
しかし同時に、日本が2030年に向けた脱炭素目標(電源構成のLNG比率維持・石炭火力削減)と逆行する動きであることは否定できない。実際、政府は2026年春、LNG供給不足への対応として石炭火力発電所の稼働制限を解除している。5月統計の一般炭数量+14.1%は、その政策転換の帰結が貿易統計に数字として現れたものだ。
「緊急避難」か「構造変化の始まり」か——現時点では判断できない。だが月次の数字として事実を記録しておく意味は大きい。
8. JOGMECの視点——世界在庫80日分と「Unlikely」
エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が2026年4月16日に公表した原油市場アップデートは、上記の統計データを見るうえで重要な文脈を提供する。
- ホルムズ海峡の完全閉鎖は「Unlikely(可能性が低い)」と評価
- 2025年からのOPEC+減産緩和と米州増産により、世界は供給過剰の状態
- 世界の石油在庫は観測できるだけでも世界消費の80日分相当
- ホルムズ海峡を通る原油の9割がアジア向け。LPGとナフサはほぼ全量がアジア向け
「LPGとナフサはほぼ全量がアジア向け」というJOGMECの指摘は、代替調達の構造的困難さを説明している。中東産のLPGやナフサは元々アジアに向けて生産・輸出されており、他地域(米国・欧州)の既存のLPG・ナフサを奪い合う構図になる。世界全体の需給が逼迫しているなかで、複数のアジア需要国が同時に代替調達に動いている。そのため代替調達競争は想像以上に激しい。
一方で「世界在庫80日分」という数字は一定の安心材料でもある。原油については需給が崩壊するレベルではなく、価格高騰とコスト上昇は不可避だが、物量的な枯渇リスクは限定的との見立てだ。
9. アラスカ——政治的シンボルと足元の数量効果
2026年3月19日の日米首脳会談でアラスカ産原油の増産協力が合意され、大きく報道された。しかし米EIAの予測では、2026年のアラスカ全体の増産幅は前年比で日量約1.6万バレル程度にとどまる見通しだ。
5月統計で米国からの原油数量は前年比+23.9%(576千KL)と増加している。ただしこれはアラスカ分というよりも、米国湾岸(テキサス・ルイジアナ)からの軽質原油調達増が主体と見られる。アラスカは地政学的なシンボルとしての意義と、中長期的な投資対象としての意義は大きいが、2026年5月の貿易統計に直接寄与できる水準にはない。
10. 停戦合意文書は署名された——それでも石油が戻るまで数ヶ月かかる理由
2026年6月18日、米国・イスラエルとイランの間で停戦合意文書が署名された。通航正常化への期待は高まった。しかし——「署名=即日回復」ではない。これは政治の問題ではなく、物理と商業の問題だ。
↓ 保険(戦争保険)の復活手続き・船主の安全確認・出港準備
↓ ホルムズ→日本 航海日数 約20日
↓ 沖待ち・入港・荷役・通関 約5〜10日
↓ 製油所処理・製品出荷 さらに数週間
貿易統計では7月分(8月20日前後発表)に兆候、8月分で本格回復確認
最速でも署名から約30日後が着荷、国民生活レベルで「供給が戻った」と実感できるのは早くても8〜9月だ。これは政治意思の問題ではなく、海上輸送・荷役・通関という物理的なプロセスが持つ不可避のリードタイムである。
そして最も重要な点がある。今夏の電力需要ピーク期(7〜8月)は、現在の不足構造のまま乗り切ることになる可能性が高い。LNG在庫は3月時点で約3週間分(民間在庫のみ)。石炭火力の稼働制限解除で補っているが、夏の猛暑と重なれば電力需給が逼迫するリスクは残る。
| 生活への影響 | 現状 | 回復の見通し |
|---|---|---|
| ガソリン価格 | 揮発油輸入単価+68.5%(5月統計) | 8〜9月以降に輸入単価の低下が始まる可能性 |
| 電気代 | 石炭火力増→燃料費調整額上昇圧力 | 夏の需要ピークを現状構造で乗り切る必要。LNG在庫水準が焦点 |
| プラスチック製品・包装材 | エチレン稼働率67.3%・値上がり圧力 | 製油所への原油供給回復後、数ヶ月のタイムラグで緩和 |
| 医薬品・食品包装 | 石油化学原料コスト上昇が川下に波及中 | 価格転嫁は遅行。実感できる改善は年末以降の可能性 |
| 備蓄残高 | 4月末5,929万KL・210日分 | 5月末データは7月15日公表予定。減少ペースの確認が次の焦点 |
停戦合意文書の署名は確かに転換点だ。しかし貿易統計が「回復」を数字として示すのは早くても7月分(8月発表)、国民生活への波及はさらにその先になる。今夏を現状の不足構造で乗り切れるかどうか——それが次の焦点だ。
今回の5月統計で個人的に一番刺さったのは、韓国揮発油の数量が▲45.7%という数字です。4月の+224.3%(石油製品)から一転して後退。「韓国経由が代替の柱」というナラティブが、わずか1ヶ月で崩れた。代替調達の実態は米国からの精製品(揮発油6.6倍)が主役で、韓国は脇役にすら入っていない。
4月の需給を一次情報で計算すると、原油輸入4,480千KL+備蓄放出6,430千KL=合計10,910千KL、前年比▲11.6%の不足。4月はなんとか乗り切った。でもこのペースで備蓄を放出し続ければ夏に向けて残高は急減する。6月18日の停戦合意文書署名は転換点になり得ますが、タンカーが日本に着くまでは最速でも約30日。夏の電力需要ピークを現状構造のまま乗り切れるかどうか——7月・8月の貿易統計と電力需給の数字が次の検証ポイントになります。
📚 出典
- 財務省「令和8年5月分貿易統計(速報)」2026年6月17日発表
- 財務省「令和7年5月分貿易統計(確々報)」
- 財務省「令和7年分貿易統計(確々報)」2026年3月12日発表
- 財務省「令和7年4月分貿易統計(確々報)」2026年3月12日発表
- 財務省「令和8年4月分貿易統計(輸出確報;輸入9桁速報)」2026年5月28日発表
- 資源エネルギー庁「石油備蓄の現況 令和8年5月(3月末時点)」2026年5月15日公表
- 資源エネルギー庁「石油備蓄の現況 令和8年6月(4月末時点)」2026年6月15日公表
- ジェトロ「日本の4月の石油化学製品生産は前月より増加、在庫活用や中東以外から調達」2026年5月22日
- JOGMEC「中東情勢を巡る原油市場アップデート」2026年4月16日
- JERA「PETRONAS LNG社とのLNG売買契約の締結について」2026年6月10日
- SDKI Analytics「ホルムズ海峡の危機によるLNG供給逼迫を受け、日本が石炭火力発電所の稼働制限を解除」2026年4月
- 資源エネルギー庁「燃料調達をめぐる動向と電力・ガスの安定供給について」2026年3月27日
- 時事通信「エチレン生産設備の稼働率67.3%・過去最低更新」2026年5月21日(石油化学工業協会発表)

