【3M決算】Q2売上65億ドル・調整後EPS2.40ドルでコンセンサス上振れ——通期ガイダンス上方修正も株価9%急伸、PFAS訴訟リスクは継続
2026年7月22日|ぱぶちゃんのファンダメンタルlab
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3Mの2026年第2四半期決算(GAAP)は、売上高65.0億ドル(前年比+2.4%)・営業利益率15.1%(同▲290bp)・EPS1.78ドル(同+33%)。特別項目を除いた調整後ベースでは売上高65.0億ドル(調整後総売上成長+5.5%=オーガニック+5.4%+為替+0.8%-事業売却▲0.7%)・調整後営業利益率24.9%(同+40bp)・調整後EPS2.40ドルで、アナリストコンセンサス(EPS2.24〜2.29ドル、売上高63.8億〜64.4億ドル)をいずれも上回った。GAAP+2.4%との差は主にPFAS製品撤退(前年剥落)の影響。会社は通期の調整後EPSガイダンスを8.50〜8.70ドルから8.80〜8.95ドルへ上方修正。決算発表を受け、7月21日の取引で株価は前日比約9%急伸し168ドル台まで上昇した。安全衛生・産業用(Safety and Industrial)セグメントの二桁近い伸びが牽引した一方、Dyneon(フッ素樹脂子会社)売却に伴う損失やPFAS関連訴訟費用などの特別項目がGAAP利益を圧迫した。
📋 目次
1|3Mとはどんな会社か
3M Company(NYSE: MMM)は1902年に米ミネソタ州で創業し、現在は同州セントポールに本社を置く、世界有数の多角化産業コングロマリットだ。研磨材・接着剤・電気製品・個人用保護具などを扱う「Safety and Industrial」、自動車・航空宇宙・エレクトロニクス向け製品の「Transportation and Electronics」、家庭用品・オフィス用品の「Consumer」の3つの事業セグメントで構成される。会長兼CEOはウィリアム・ブラウン氏、CFOはアヌラグ・マヘシュワリ氏、IR・財務計画担当上級副社長はチンメイ・トリベディ氏。
近年の3Mを語る上で欠かせないのが、有機フッ素化合物(PFAS)を巡る大型訴訟・環境対応だ。2022年12月にPFAS製造からの全面撤退を表明し、2025年末までに製造を完了。米国の水道事業者を対象とした集団訴訟(PWS Settlement、最大125億ドル)やCombat Arms Earplugs(CAE)訴訟(最大60億ドル)など、既に総額で兆円規模の和解金・引当金を計上済みだが、今なお全米で1万5千件超のAFFF(泡消火剤)関連訴訟が係属中であり、株価のオーバーハング要因として意識され続けている。
一方で近年は「3M eXcellence」を掲げた構造改革(商業・イノベーション・オペレーションの各領域での効率化)を進めており、新製品売上比率の改善やAI活用の拡大など、成長ドライバーへの投資も並行して行っている。2026年7月には、Bain Capitalとの合弁でMadison Fire & Rescue(消防・救助技術)を買収するなど、ポートフォリオの積極的な組み替えも継続中だ。
2|主要財務ハイライト(コンセンサス対比)
米国時間2026年7月21日、3Mは2026年第2四半期(4〜6月期)決算を発表した。GAAP・調整後(Adjusted)いずれの基準でも、アナリストコンセンサスを上回る増収増益決算となった。
| 指標 | Q2'26実績(GAAP) | Q2'26実績(Adjusted) | コンセンサス | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 65.00億ドル | 65.00億ドル | 63.8〜64.4億ドル | GAAP+2.4% |
| EPS(希薄化後) | 1.78ドル | 2.40ドル | 2.24〜2.29ドル | GAAP+33%/Adj+11% |
| 営業利益 | 9.84億ドル | 16.15億ドル | — | GAAP▲13.7%/Adj+7.2% |
| 営業利益率 | 15.1% | 24.9% | — | GAAP▲2.9pt/Adj+0.4pt |
| 純利益(3M株主帰属) | 9.33億ドル | 12.55億ドル | — | GAAP+29.0% |
売上高はGAAPベースで前年比+2.4%(オーガニック+2.3%)にとどまったが、これは前年に含まれていたPFAS製品の売上(2025年末で撤退完了)が今期はゼロになった影響が大きい。この特殊要因を除いた調整後ベースでは、オーガニック成長+5.4%と大きく上振れ、複数の海外メディア(BNN Bloomberg、Zacks、ChartMill.com等)の集計によれば、調整後EPSはコンセンサス比+6〜7%程度のビートとなった。
GAAP営業利益率は15.1%と前年同期(18.0%)から2.9ポイント低下したが、これはDyneon売却損など特別項目の影響が主因。特別項目を除いた調整後営業利益率は24.9%(前年比+40bp)と、収益性自体は着実に改善している。
3|セグメント別・地域別の内訳
セグメント別(調整後ベース)では、最大セグメントのSafety and Industrialが二桁近い成長を続ける一方、Consumerは米国小売の在庫調整が響き減収となった。
| セグメント | Q2'26売上高 | オーガニック成長 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|
| Safety and Industrial(約50%) | 30.91億ドル | +8.2% | 27.8%(+2.0pt) |
| Transportation and Electronics(約30%) | 20.66億ドル | +5.9% | 24.4%(▲0.2pt) |
| Consumer(約20%) | 12.47億ドル | ▲2.1% | 20.1%(▲1.0pt) |
Safety and Industrialは電気製品・産業用接着剤/テープ・研磨材・産業特殊品が二桁成長し、Personal Safety(個人用保護具)も堅調に推移。Transportation and Electronicsは半導体・データセンター・航空宇宙・先端材料が牽引した一方、自動車OEM・民生エレクトロニクスは軟調な市場環境が続いた。Consumerは米国小売の在庫調整がPOS(店頭販売)の改善やシェア拡大の効果を上回り、減収となった。
| 地域 | Q2'26売上高 | 構成比 | 総額ベース前年比 |
|---|---|---|---|
| 米国・カナダ(Americas) | 35.16億ドル | 54.1% | +1.0% |
| アジア太平洋 | 18.70億ドル | 28.8% | +4.9% |
| 欧州・中東・アフリカ(EMEA) | 11.14億ドル | 17.1% | +3.2% |
地域別では中国が総額ベースで+13.9%と際立って強く、半導体・データセンター向け需要の拡大が寄与した。米国・カナダは為替・M&Aの影響を除くオーガニックではほぼ横ばい(0%)にとどまっている。
4|特別項目の中身(GAAPとAdjustedの差)
Q2のGAAP EPS(1.78ドル)とAdjusted EPS(2.40ドル)の差0.62ドルの内訳は以下の通り。
| 特別項目 | 税引前影響額 | EPSへの影響 |
|---|---|---|
| PFAS関連訴訟・PFAS撤退に伴う純費用 | 1.83億ドル | ▲0.44ドル |
| Dyneon(独フッ素樹脂子会社)売却損 | 3.36億ドル | ▲0.61ドル |
| Transformation(構造改革)費用 | 1.00億ドル | ▲0.15ドル |
| 買収関連費用 | 0.12億ドル | ▲0.02ドル |
| Solventum(分離会社)株式の時価評価益 | 3.03億ドル | +0.60ドル |
2024年に分離したヘルスケア事業Solventumの保有株(約15%、時価約20億ドル)の評価損益は、四半期ごとにEPSを大きく振らす要因として定着している。今回は株価上昇によりEPSを0.60ドル押し上げたが、H1累計(1〜6月)ではむしろ0.08ドルの押し下げ要因となっており、四半期単位での方向感は読みにくい。
5|四半期推移
| 四半期 | 売上高(GAAP) | 調整後オーガニック成長 | 調整後営業利益率 | 調整後EPS |
|---|---|---|---|---|
| Q2'25 | 63.44億ドル | — | 24.5% | 2.16ドル |
| Q1'26 | 60.03億ドル | 約1.1%※1 | 23.6%※1 | 2.14ドル |
| Q2'26(今回) | 65.00億ドル | 5.4% | 24.9% | 2.40ドル |
※1 Q1'26単体の開示ベースでの概算値。H1累計(1〜6月)ベースでは調整後オーガニック成長+3.3%、調整後営業利益率24.3%、調整後EPS4.54ドル。
調整後オーガニック成長率はQ1の低調な立ち上がりから一転、Q2で大きく加速した。会社側はSafety and Industrialにおける商業改革(コマーシャル・エクセレンス)の浸透と、半導体・データセンター向け需要の強さを主因に挙げている。
6|キャッシュフロー・株主還元
| 項目 | Q2'26 | H1'26累計 |
|---|---|---|
| 調整後フリーキャッシュフロー | 13.48億ドル | 18.89億ドル |
| FCFコンバージョン | 107% | 79% |
| 株主還元額(配当+自社株買い) | 14億ドル | 38億ドル |
| 現金及び現金同等物(期末) | 29.55億ドル | (前期末52.35億ドル) |
四半期配当は1株0.78ドルで、2026年2月に前年比+7%の増配を実施済み。現行の75億ドル自社株買いプログラム(2025年2月開始、期限なし)は、H1累計で30億ドルを消化し、残り約18億ドルの枠が残る。
現金及び現金同等物は前期末(2025年12月末)の52.35億ドルから29.55億ドルへ減少。主因は30億ドルの自社株買い、CAE和解・PFAS環境負債向けの支払い(約10億ドル)、8億ドルの配当支払いで、一部は保険金回収(4億ドル)等で相殺された。
7|通期ガイダンス上方修正の中身
| 項目 | 4月時点ガイダンス | 更新後ガイダンス |
|---|---|---|
| 調整後オーガニック売上成長 | 約3% | 3.5%超 |
| 調整後EPS | 8.50〜8.70ドル | 8.80〜8.95ドル |
| 調整後営業利益率拡大幅 | — | 70〜80bp |
| 調整後営業キャッシュフロー | 46.0〜48.0億ドル | 47.0〜49.0億ドル |
| FCFコンバージョン | 100%超 | 100%超(据え置き) |
今回の上方修正は、上半期の好調な実績(オーガニック成長・利益率とも会社の中期目標に対して「先行」評価)を反映したもの。会社側は資料の中で、2024年実績から2026年ガイダンスに至る各指標について、オーガニック成長・営業利益率・EPSがいずれも中期目標に対し「Ahead」(先行)、FCFコンバージョンは「On track」(計画通り)と自己評価している。
なぜ上半期にこれほど加速したのか。決算説明会資料は要因を大きく2つに整理している。1つ目は「3M eXcellence」と呼ぶ構造改革の進捗で、①セールスフォースの効率化・解約率低減を軸にした「Commercial eXcellence」、②新製品投入テンポの加速・開発サイクル短縮を軸にした「Innovation eXcellence」、③OTIF(納期遵守率)改善・不良コスト削減・OEE(設備総合効率)最適化を軸にした「Operational eXcellence」の3本柱で進めており、TTM(直近12カ月)ベースのオーガニック成長率はFY2023の▲4.4%から段階的に改善し、H1'26では+3.0%まで回復している。2つ目は市場環境の追い風で、ガイダンス前提として一般産業・安全衛生・データセンター向けの「継続的な勢い」を明記する一方、民生・民生エレクトロニクス市場の軟調が相殺要因として残ると説明しており、上振れと下振れの両要因を会社自身が織り込んだ数字であることが読み取れる。
なお、このガイダンスには7月1日にクローズしたMadison Fire & Rescue買収の影響が含まれていない点に注意が必要だ。同買収によるH2の売上上乗せ効果は約2億ドルと見込まれており、実現すればさらなる上振れ要因になり得る。
8|Madison Fire & Rescue買収など主要イベント
📋 直近の主要イベント
- Bain Capitalとの合弁で消防・救助技術大手Madison Fire & Rescueを19.5億ドルで買収(7月1日クローズ、3M出資比率50.1%)。3Mは自給式呼吸器(SCBA)事業を現物出資し、合弁全体を連結対象化
- MicrosoftとExpanded Beam Optics(EBO)技術のデータセンター向け提携を発表。MicrosoftはEBO業界標準化団体(MSA)に参加する初のハイパースケーラーに
- Airbusと航空機(A220向け)用断熱材の長期供給契約を締結
- CadillacのF1チームと材料科学分野で複数年パートナーシップを締結
- AWSを活用したAIアシスタント「Ask 3M」を展開し、技術サポートの自己解決化を推進
- NASAアルテミスII計画のオリオン宇宙船搭乗員が3M製「PELTOR ComTac VI」タクティカルヘッドセットを使用
- 4月にPrecision Grinding and Finishing事業(Safety and Industrial傘下)の売却が完了
9|株価反応
決算発表を受け、7月21日の取引で3M株は前日比約9%上昇し168ドル台まで急伸した。複数の海外メディアによれば、寄り付き前の時点でも約6%高で推移していたという。売上・EPSの二重ビートに加え、通期ガイダンスの上方修正が市場に好感された格好だ。
なお、直近の株価パフォーマンスは市場平均に対してやや見劣りしており、直近52週の上昇率は+13.7%程度と、S&P500指数(+20.8%)や資本財セクターETF(+28.1%)を下回っていた。今回の決算を受けた急伸は、こうした出遅れ感の一部解消という側面もありそうだ。
10|注視すべきポイント(PFAS訴訟等)
⚠️ 決算資料・10-Qから読み取れる留意点
① PFAS関連環境負債は74億ドル(前期末77億ドル)を計上済みだが、AFFF(泡消火剤)関連訴訟は全米で約15,200件が係属中で、今後の追加引当リスクを注視する必要がある
② Combat Arms Earplugs(CAE)訴訟の残存負債は19億ドル(前期末24億ドル)と着実に減少しているが、豪州・英国など国際案件は新たに発生中
③ ニュージャージー州との和解(最大4.5億ドル)は連邦地裁の承認待ちが続いている
④ Solventum株の時価評価が四半期ごとのEPS変動要因として残存(保有比率約15%、時価約20億ドル)。5年以内の売却方針だが規制上の制約もある
⑤ Madison買収はまだガイダンスに未反映で、実際の統合効果はQ3以降の実績で確認する必要がある
⑥ 非Aearo呼吸器マスク・アスベスト訴訟の係属件数は約4,000件(前期末3,700件)と増加傾向にあり、重篤な疾患(中皮腫等)の比率上昇でクレーム単価の上昇も想定される
総じて、今回の決算は増収増益・ガイダンス上方修正という好材料が明確で、株価も大幅高で応えた。一方でPFAS関連訴訟は依然として係属件数・引当額とも大きく、四半期ごとの特別項目のブレはGAAP利益の解釈を難しくしている。中期的には、Safety and Industrialの商業改革の持続性と、Madison買収を含むポートフォリオ再編の実行力が、株価の次の焦点になりそうだ。
出典
- 3M Company「3M Reports Second-Quarter 2026 Results; Increases Full-Year Guidance」プレスリリース(2026年7月21日)|原文PDF
- 3M Company「2026 Second Quarter Earnings」決算説明会資料(2026年7月21日)|原文PDF
- 3M Company「Q2 2026 Supplemental Financial Schedules」(非GAAP指標の詳細調整表)|原文PDF
- 3M Company Form 10-Q(2026年6月30日期、米SEC提出、2026年7月21日付)|原文PDF
- ChartMill.com「3M Co. (NYSE:MMM) Stock Jumps on Strong Earnings Beat and Raised Guidance」(2026年7月21日)|記事リンク
- Proactive Investors「3M shares jump on Q2 earnings beat, raised guidance」(2026年7月21日)|記事リンク
- Financial Content / StockStory「3M (NYSE:MMM) Exceeds Q2 CY2026 Expectations, Stock Soars」(2026年7月21日)|記事リンク
- Yahoo Finance「Insights Into 3M (MMM) Q2: Wall Street Projections for Key Metrics」(2026年7月17日)|記事リンク
- Yahoo Finance「3M Gears Up to Report Q2 Earnings: What Lies Ahead for the Stock?」(Zacks配信、2026年7月19日)|記事リンク
✍️ 執筆者/ぱぶちゃん|投資歴6年/ぱぶちゃんのファンダメンタルlabを事実ベースで解説するブログを運営中。相場の「なぜ?」を一緒に考えましょう。ナンピンは得意です。/X(旧Twitter):@pablo29god
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