【テキサス・インスツルメンツ決算】売上54.63億ドル・EPS2.14ドルともにコンセンサス上振れもQ3ガイダンス超え後に株価は時間外急落——10年間CFOを務めたリザーディ氏、最後の決算発表に
2026年7月23日|ぱぶちゃんのファンダメンタルlab
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Texas Instruments(Nasdaq: TXN)の2026年第2四半期決算は、売上54.63億ドル(前年同期比+23%、前四半期比+13%)、EPS2.14ドル(前年1.41ドルから+52%)となり、Zacksコンセンサス(売上52.2億ドル、EPS1.91ドル)をそれぞれ+4.57%、+12.04%上回った。他の情報ベンダー集計でも売上52.5億〜52.6億ドル、EPS1.92〜1.95ドル程度が予想されており、いずれの基準でも明確なダブルビートとなった。なおEPSには当初ガイダンスに含まれていなかった一過性の税制便益0.05ドルが含まれる。Q3ガイダンスも売上56.5億〜61.5億ドル、EPS2.23〜2.57ドルとコンセンサスを上回る水準を提示した。一方で株価は、好決算にもかかわらず発表後の時間外取引で3.4%〜4%程度下落しており、高PERを背景とした材料出尽くし的な売りとの見方が報じられている。また、約10年間CFOを務めたラファエル・リザーディ氏にとって今回が最後の決算説明会となり、8月1日付でジュリー・クネクト氏が新CFOに就任する。
📋 目次
1|テキサス・インスツルメンツとはどんな会社か
Texas Instruments Incorporated(Nasdaq: TXN)は、テキサス州ダラスに本社を置く世界的な半導体企業。アナログ半導体(電力管理・信号処理)と組み込みプロセッシングチップの設計・製造・販売を手がけ、産業機器、自動車、データセンター、パーソナルエレクトロニクス、通信機器向けに製品を展開している。300mmウエハーによる自社生産体制への投資を競争力の柱としており、需要増加局面での供給対応力の強さを強調している。
2|主要財務ハイライト(コンセンサス対比)
米国時間2026年7月22日(市場引け後)、TIは2026年第2四半期(4〜6月期)決算を発表した。売上・EPSともに市場予想を上回るダブルビートとなり、Q3ガイダンスもコンセンサス超えの水準を提示した。
| 指標 | Q2'26実績 | コンセンサス | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上 | 54.63億ドル | 約52.2〜52.6億ドル | +23%(前四半期比+13%) |
| 営業利益 | 23.10億ドル | — | +48% |
| 純利益 | 19.80億ドル | — | +53% |
| EPS(希薄化後) | 2.14ドル | 約1.91〜1.95ドル | 前年1.41ドルから+52% |
📌 コンセンサス出典の内訳
- Zacksコンセンサス:売上52.2億ドル/EPS1.91ドル|出典:Zacks Investment Research(Yahoo Finance掲載)
- StockStory(FinancialContent)集計:売上52.6億ドル/EPS1.94ドル
- Benzinga Pro集計:売上52.5億ドル/EPS1.92ドル
- Wall St Engine集計:売上52.4億ドル/EPS1.95ドル
売上のコンセンサス超え幅は情報ベンダーにより+3.8%〜+4.6%程度、EPSは+9.7%〜+12.0%程度と幅があるが、いずれの基準でも明確なビートとなった。なおEPS2.14ドルには、当初ガイダンスに織り込まれていなかった一過性の税制便益0.05ドルが含まれている点には留意したい。
※コンセンサス数値は情報ベンダーにより集計対象アナリスト数や集計時点が異なるため幅がある点に留意。決算発表前時点でのアナリスト予想レンジはEPS1.66〜2.04ドル(26人集計、Alphastreet調べ)と幅広く、需要回復ペースを巡る不透明感が残っていた。
3|セグメント・エンドマーケット別動向
| セグメント | 売上 | 売上YoY | 営業利益 | 営業利益YoY |
|---|---|---|---|---|
| Analog | 43.65億ドル | +26% | 19.92億ドル | +50% |
| Embedded Processing | 7.88億ドル | +16% | 1.68億ドル | +98% |
| Other | 3.10億ドル | ▲2% | 1.50億ドル | ▲2% |
エンドマーケット別(CEO Haviv Ilan氏コメントより):産業用は前年同期比約+30%、前四半期比約+10%と地域・業種を問わず幅広い成長。自動車はYoYミドルティーンズ、QoQは上一桁%の伸び。データセンターはYoYで倍増、QoQでも約+20%と最も高い伸び率。パーソナルエレクトロニクスはYoY横ばいながらQoQでは上一桁%増。通信機器はYoY・QoQともに増収となった。
会社側は、在庫・生産能力への投資が需要増加局面での顧客対応力を支えているとし、クリーンルームの余力を含め引き続き成長を下支えできる体制にあるとコメントしている。データセンターはYoY倍増・QoQ+20%と全エンドマーケット中で最も高い伸び率を示しており、AI関連投資拡大による電力管理半導体需要の取り込みが寄与しているとみられる。アナログ半導体大手では、電源管理・データコンバータを中心にAI関連の恩恵を受けている点はON SemiconductorやAnalog Devicesなど競合各社にも共通する傾向で、TIの数字単独というよりは業界全体のトレンドとして捉える視点も有用だろう。
4|特殊要因(税制便益・CHIPS Act)
今回のEPS2.14ドルには、当初ガイダンスに含まれていなかった一過性の税制便益0.05ドルが含まれている。会社側の開示によれば、四半期の税額控除(Discrete tax items)は0.51億ドルの減額要因として作用しており、通常の実効税率ベースの見積もり(Operating taxes、3.09億ドル)に対し、実際の税負担(Effective taxes)は2.58億ドルにとどまった。
また、米CHIPS Act(CHIPS and Science Act)関連の現金便益も引き続き業績を下支えしている。Q2単独で投資税額控除(ITC)を活用した税負担軽減301百万ドルに加え、設備投資向けの直接受給549百万ドルを受領。トレーリング12カ月ベースでのCHIPS Act関連現金便益は合計8.5億ドルに達した(前年同期は2.03億ドル)。
なお「Other」セグメントには買収関連費用1,700万ドルが新たに計上されており(前年同期は計上なし)、直近でM&A関連の動きがあったことがうかがえる。
5|収益性・キャッシュフロー
| 指標 | Q2'26(四半期) | TTM | TTM前年比 |
|---|---|---|---|
| 営業キャッシュフロー | 27.03億ドル | 86.67億ドル | +35% |
| フリーキャッシュフロー(非GAAP) | 27.38億ドル | 65.34億ドル | +271% |
| FCFマージン(対売上高) | — | 33.6% | 前年同期10.6% |
決算説明会でCFOのラファエル・リザーディ氏は、粗利益率が前四半期比+340bpに拡大し61%程度の水準となったと説明。営業利益率は42%(前年同期35.1%から大幅改善)に達した。設備投資はQ2単独で5.14億ドル、TTMで33.12億ドルと前年同期の49.36億ドルから減少しており、300mm生産投資の一巡が資本効率の改善に寄与しているとみられる。
TTMフリーキャッシュフロー65.34億ドルには、CHIPS Act関連の現金便益がTTMで8.5億ドル含まれている。単純計算では、同便益を除いたオーガニックベースのFCFは約56.8億ドル、対売上高比では29%程度となる計算で、それでも前年同期からの改善幅は大きいものの、公表値の65.34億ドル・33.6%をそのまま「事業本来の稼ぐ力」として評価するのは過大となる点には注意したい。
6|バランスシート・株主還元
| 項目 | 2026年6月末 | 2025年6月末 |
|---|---|---|
| 現金及び短期投資 | 70.01億ドル | 53.59億ドル |
| 棚卸資産(在庫日数) | 46.05億ドル(196日) | 48.12億ドル |
| 総資産 | 358.82億ドル | 349.33億ドル |
| 長期負債(含む流動分) | 約140.5億ドル | 140.4億ドル |
在庫は前四半期比9,000万ドル減の46.05億ドル、在庫日数は196日と13日短縮した。負債は総額140億ドル、加重平均クーポン4.0%と、財務基盤は安定的に推移している。
株主還元面では、配当がTTMで51.12億ドル(+4%)と安定的に増加した一方、自社株買いはTTMでわずか7.07億ドル(前年同期比▲61%)と大幅に縮小した。フリーキャッシュフローがTTMで+271%と急拡大する中での買戻し減少であり、株主還元合計はTTMで58.19億ドル(▲13%)となった。配当を安定的に積み増しつつ買戻しを絞る構図からは、300mm生産能力への投資回収局面にある中で、株価水準(PER約50倍)を踏まえて自社株買いのペースを意図的に抑え、手元資金や将来の設備投資余力を確保している可能性もうかがえる。
7|Q3ガイダンス
📋 Q3 2026ガイダンスの要旨
- 売上:56.5億〜61.5億ドル(中央値59.0億ドル)
- コンセンサス:約55.7億〜56.3億ドル ⇒ 中央値ベースで上振れ
- EPS:2.23〜2.57ドル(中央値2.40ドル)
- コンセンサス:約2.15ドル ⇒ 中央値ベースで上振れ
- 実効税率見込み:約13%
会社側は、産業用・データセンター・自動車を中心とした需要拡大が続くとの見立てを示しており、供給体制の余力も踏まえ、Q3も引き続き増収基調が続くとの見通しを提示した。
8|主要トピック(CFO交代)
📋 経営体制の変化
- 約10年間CFOを務めたラファエル・リザーディ氏が8月末に退任。今回が同氏にとって最後の決算説明会となった
- 後任には、TI在籍25年超で2021年から chief accounting officer(最高会計責任者)を務めるジュリー・クネクト氏が8月1日付で就任予定
- リザーディ氏は在任中、300mm生産能力への投資や、フリーキャッシュフロー全額を株主還元に充てる資本配分方針を主導してきたと説明された
- 決算説明会の冒頭で、IR責任者のMike Beckman氏がリザーディ氏への謝意を表明し、リザーディ氏自身もTI在籍25年・CFO在任10年を振り返るコメントを残した
9|株価反応
決算発表前、TI株は複数の証券会社による目標株価引き上げ(Susquehanna:300ドル→340ドル、UBS:295ドル→350ドル、Cantor Fitzgerald:300ドル→340ドル、Stifel:340ドル→360ドルなど)を受けて上昇基調にあり、決算発表当日の通常取引では前日比+3.2%〜+3.5%程度の292〜294ドル近辺まで買われていたと報じられている。年初来の上昇率は+65%〜+69%程度に達し、5月につけた52週高値324.89ドルに接近する場面もあった。
しかし、売上・EPSともにコンセンサスを上回り、Q3ガイダンスも市場予想超えの水準を提示したにもかかわらず、決算発表後の時間外取引ではTI株は一転して下落。報道により幅はあるが、-3.4%〜-4%程度、284ドル近辺まで売られたとされる。複数の報道では、PER(実績ベース)が約50倍と過去5年の中央値(約25倍)の倍近い水準まで買われていたことを背景に、好決算にもかかわらず「材料出尽くし」的な売りが出たとの見方が示されている。
このように、決算内容自体は市場予想を上回るダブルビート・増額ガイダンスであった一方、株価は事前の期待の高さとバリュエーション水準を背景に逆行安となっており、決算内容と株価反応が乖離した典型的な「Good quarter, bad reaction」の展開になったといえる。
10|注視すべきポイント
⚠️ 決算資料・報道から読み取れる留意点
① 実績PERが約50倍と5年中央値(約25倍)の倍近い水準にあり、好決算にもかかわらず株価が下落した点はバリュエーション調整の可能性を示唆する
② フリーキャッシュフローがTTMで前年同期比+271%と急拡大する一方、自社株買いはTTMで▲61%と大幅に縮小しており、資本配分方針の変化を継続的に確認する必要がある
③ 約10年間CFOを務めたリザーディ氏が退任し、クネクト新CFOへの移行期にあたる。今後の資本政策・情報開示スタンスの継続性が焦点
④ 「Other」セグメントに買収関連費用が新たに計上されており、M&A動向を要フォロー
⑤ EPS2.14ドルには当初ガイダンス外の一過性税制便益0.05ドルが含まれており、経常的な収益力を評価する際は同要因を除いたベースでの確認が必要
⑥ TTMのフリーキャッシュフローにはCHIPS Act関連の現金便益(TTM8.5億ドル)が含まれており、制度変更リスクを含め継続性には留意が必要
⑦ 決算発表前のアナリスト予想レンジ(EPS1.66〜2.04ドル)が広く、業界の需要回復ペースを巡る不透明感が完全には払拭されていない可能性がある
総じて今回の決算は、売上・EPSともにコンセンサスを上回り、Q3ガイダンスも増額される内容面では強い決算であった。一方で、決算発表後に株価が下落したことは、事前に積み上がった期待値の高さとバリュエーション水準が要因とみられ、業績そのものへの評価というよりは需給・センチメント面の調整という側面が強いと考えられる。次回Q4決算では、Q3ガイダンスの達成状況とクネクト新CFOの下での資本配分方針の継続性が焦点となりそうだ。
出典
- Texas Instruments Incorporated「TI reports second quarter 2026 financial results and shareholder returns」(2026年7月22日)|ti.com/ir
- Texas Instruments Incorporated「Q2 2026 Financial Results Conference Call Prepared Remarks」(2026年7月22日)
- Zacks Investment Research「Texas Instruments (TXN) Reports Q2 Earnings: What Key Metrics Have to Say」(2026年7月22日、Yahoo Finance掲載)
- Benzinga「Texas Instruments Stock Slips Despite Q2 Double Beat, Strong Outlook」(2026年7月22日)
- StockStory(FinancialContent)「Texas Instruments (NASDAQ:TXN) Reports Bullish Q2, Inventory Levels Improve」(2026年7月22日)
- StockTitan「TI Reports Second Quarter 2026 Financial Results and Shareholder Returns」(2026年7月22日)
- Alphastreet「Texas Instruments Q2 2026 Earnings Preview」(2026年7月)
- GuruFocus「Texas Instruments (TXN) Reports Strong Financial Outlook, Shares Drop Despite Positive Numbers」(2026年7月22日)
- Wall St Engine(X/Twitter)「TEXAS INSTRUMENTS $TXN Q2'26 EARNINGS HIGHLIGHTS」(2026年7月22日)
✍️ 執筆者/ぱぶちゃん|投資歴6年/ぱぶちゃんのファンダメンタルlabを事実ベースで解説するブログを運営中。相場の「なぜ?」を一緒に考えましょう。ナンピンは得意です。/X(旧Twitter):@pablo29god
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