【2026年7月 全国CPI】総合+1.9%・コア+1.8%・コアコアも+1.9%へ全指標で伸び拡大——高校無償化の押し下げ効果は6月と変わらず一定、川上物価7%超との溝は埋まらず
7月のCPIは、総合・コア・コアコアの3つとも伸びが拡大。6月にあった「歪み」が消え、物価上昇の勢いが強まった月だった。
- ▶①総合+1.9%、コア+1.8%、コアコア+1.9%(いずれも6月から上昇率拡大)
- ▶②押し上げたのは光熱費と自動車保険・通信料。教育(私立高校無償化)の押し下げ効果は6月と変わらず一定
- ▶③企業物価は+7.2%、輸入物価は+29.1%と高止まり。物価高倒産も単月で過去最多を更新した
📊 1. 数字の全体像——3指標がそろって上昇率拡大
総務省が2026年8月21日に発表した7月の全国消費者物価指数(CPI)は、総合指数が102.0、前年同月比+1.9%だった。6月の+1.6%から0.3ポイントの拡大だ。今回から基準年が2025年に切り替わっている。生鮮食品を除く総合(コア)も102.1、前年比+1.8%(6月+1.6%)と上昇率が拡大。季節調整済みの前月比も総合+0.4%、コア+0.3%とどちらもプラスだった。
今回注目したいのは、生鮮食品とエネルギーを除いた「コアコア」も+1.9%(6月+1.7%)まで上昇率が拡大した点だ。6月は総合・コアだけ伸びが拡大し、コアコアはむしろ鈍化するという食い違いがあった。7月はその食い違いが消え、3つの指標がそろって同じ方向を向いた。政策要因の反動だけでは説明しきれない、物価の底上げが起きている月だと言える。
| 指標 | 指数 | 7月前年比 | 6月前年比 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 総合CPI | 102.0 | +1.9% | +1.6% | 拡大 |
| コア(生鮮除く) | 102.1 | +1.8% | +1.6% | 拡大 |
| コアコア(生鮮・エネルギー除く) | 102.1 | +1.9% | +1.7% | 拡大(6月は鈍化していた) |
🧩 2. 十大費目でみる強弱——全項目一覧と個別解説
10の費目すべてを、前年同月比・寄与度・6月からの変化(寄与度差)で並べてみた。どこが今回の拡大要因になったかがわかりやすくなる。
| 費目 | 前年比(7月) | 寄与度(7月) | 寄与度差(対6月) |
|---|---|---|---|
| 食料 | +3.5% | 0.87 | -0.03 |
| 住居 | +1.0% | 0.20 | +0.02 |
| 光熱・水道 | +0.7% | 0.05 | +0.08 |
| 家具・家事用品 | +3.7% | 0.14 | +0.01 |
| 被服及び履物 | +1.2% | 0.06 | ±0.00 |
| 保健医療 | +2.1% | 0.08 | +0.06 |
| 交通・通信 | +2.6% | 0.37 | +0.05 |
| 教育 | -3.8% | -0.12 | ±0.00 |
| 教養娯楽 | +1.9% | 0.16 | -0.01 |
| 諸雑費 | +0.4% | 0.02 | ±0.00 |
最も伸びの拡大に効いたのは光熱・水道(寄与度差+0.08)。電気・都市ガスの前年比下落幅が縮んだためだ。次いで交通・通信(+0.05、自動車保険料や携帯電話通信料の上昇)、保健医療(+0.06、診療代の上昇)が続く。一方、食料は依然として押し上げ役の筆頭(寄与度0.87)だが、6月からはやや勢いを落とした(差-0.03)。教育は6月と全く同じ寄与度で、無償化政策による下押し(-0.14ポイント)が一定のまま続いている。
🛒 3. 代表品目でみる増減——値上がり・値下がりの現場
費目単位の数字だけでは見えない、生活実感に近い品目の動きを見てみよう。総務省が公表した主な内訳からの抜粋だ。
| 中分類 | 品目 | 前年比 | 寄与度 |
|---|---|---|---|
| 菓子類 | ポテトチップス | +13.3% | 0.03 |
| 調理食品 | からあげ | +8.3% | 0.03 |
| 生鮮魚介 | まぐろ | +20.4% | 0.04 |
| 生鮮野菜 | トマト | +13.5% | 0.03 |
| 肉類 | 牛肉(輸入品) | +11.0% | 0.02 |
| 飲料 | 緑茶 | +29.2% | 0.03 |
| 外食 | ハンバーガー(外食) | +13.2% | 0.03 |
| 設備修繕・維持 | 外壁塗装費 | +7.8% | 0.04 |
| 家賃 | 民営家賃 | +0.7% | 0.01 |
| 自動車等関係費 | 自動車保険料(任意) | +5.9% | 0.11 |
| 通信 | 通信料(携帯電話) | +4.6% | 0.11 |
| 授業料等 | 高等学校授業料(私立) | -73.2% | -0.15 |
⛽ 4. エネルギー:政策効果は一服も品目間で明暗
エネルギー全体の前年同月比は、6月の-0.4%から7月は+0.6%へ転じた。寄与度差は+0.08ポイントで、今回最大級の押し上げ要因になっている。ただし中身は一様ではない。電気代は-1.7%→-0.1%、都市ガス代は-3.2%→-1.1%と、どちらも下落幅が縮んでいる。一方でガソリンは-0.8%→-1.8%とむしろ悪化した。
総務省の試算では、ガソリン税の暫定税率廃止と補助金による政策効果は、エネルギー全体で-0.22ポイント、ガソリン単体で-0.23ポイントと、依然としてマイナス方向に働いている。つまり政策そのものの下押し効果は6月から変わっていない。それでも指数全体が上昇に転じたのは、電気・都市ガスの下落幅が縮んだことと、原油価格がガソリンの実勢価格を下支えしていることが背景にある。灯油は+16.5%→+15.7%とほぼ横ばいで、高水準の上昇が続いている。
🏫 5. 高校無償化がなければCPIはもっと高かった
教育費(授業料等)は前年比-6.4%、総合指数への寄与度は-0.14ポイント。これは6月と全く同じ数字だ。中身を支えているのは私立高校授業料の-73.2%という極端な下落で、実質無償化という補助金政策が、統計上は「教育費が大きく下がった」という形でそのまま表れ続けている。
単純に試算すると、この押し下げ効果がなければ、7月の総合CPIは+1.9%ではなく+2.0%台前半だった可能性がある。つまり「CPIが2%を下回って落ち着いている」という見え方の一部は、無償化政策という一つの制度でつくられたもの。実勢の物価上昇圧力は、数字よりも強いと考えたほうがよさそうだ。この構図は6月から変わっておらず、今後もこの押し下げ分を差し引いて数字を読む必要がある。
🏭 6. 川上と川下の乖離——企業物価+7.2%・輸入物価+29.1%
日銀が発表した7月の国内企業物価指数は、前年同月比+7.2%だった。6月(+7.3%へ改定後)からはわずかに鈍化したが、市場予想の+7.4%は下回っている。2カ月連続で7%超の高水準が続く。円ベースの輸入物価指数も前年比+29.1%(6月+29.7%)と、依然として極めて高い伸びだ。
| 段階 | 指標 | 前年比(7月) |
|---|---|---|
| 川上(輸入) | 輸入物価指数(円ベース) | +29.1% |
| 川中(卸) | 国内企業物価指数 | +7.2% |
| 川下(消費者) | CPIコア(生鮮除く) | +1.8% |
川上ほど激しく上昇し、川下に来るほど鈍る——この構図は6月から変わっていない。7月はCPIコア自体の伸びが拡大したぶん差はわずかに縮んだが、それでも大きな開きが残る。この開きの一因は、私立高校無償化やガソリン補助金といった政府の補助金による下押し効果が、川下(消費者段階)でずっと効き続けていることにもある。企業物価の高止まりが続けば、この差はいずれ川下側の上昇という形で埋まっていくだろう。
⚠️ 7. 転嫁できない企業のしわ寄せ——物価高倒産、単月過去最多
帝国データバンクによると、仕入価格の上昇を価格転嫁できずに経営が行き詰まる「物価高倒産」は、2026年7月に121件発生した。前年同月比+34.4%、単月としては集計開始(2018年)以来の過去最多だ。6月の113件からさらに8件増え、8カ月連続で前年を上回っている。上半期(1〜6月)の556件と合わせると、1〜7月の累計は677件になる。
全国の企業倒産件数も7月は1,037件(帝国データバンク集計)で、17年ぶりに2カ月連続で1,000件を超えた。価格転嫁が進まないまま川上のコスト高が続けば、体力の乏しい企業から先に淘汰されていく構図は変わっていない。
📈 8. 市場への含意——円・日銀
為替(ドル円):発表当日の8月21日時点でドル円は159円付近と、約40年ぶりの円安水準付近で推移している。今回のCPIの上昇率拡大は「予想の範囲内」として受け止められており、単体で円高に大きく振れる材料にはなっていない。米長期金利や中東情勢、米財務省の動きなど、他の材料に振らされやすい地合いが続く。
日銀:コアコアの伸び拡大は、9月の金融政策決定会合に向けて追加利上げ観測を後押しする材料になり得る。輸入物価・企業物価の高止まりも合わせると、日銀が「一時的」として無視しづらい状況になりつつある。
🔍 9. 読み解き——蛇口操作の反動が出始めた7月
6月のCPIは、ガソリン税の減税・補助金という「蛇口の開け閉め」で数字が穏やかに見える一方、コアコアだけが鈍化するという見せかけの構図だった。7月はその歪みが解消し、総合・コア・コアコアがそろって伸びを拡大させた。エネルギーの押し上げも、政策効果自体はマイナスに働き続けているのに表面上はプラスに転じており、政策の効き目が薄まりつつある兆候とも読める。
教育の押し下げ効果だけは6月から変わらず一定のままだ。これを除けば、実勢の物価上昇圧力はむしろ強まっている。企業物価・輸入物価が7%・29%超という高水準のまま、価格転嫁できない企業の倒産が単月最多を更新し続けている以上、「蛇口」で抑えきれない圧力が少しずつ表に出始めている段階だと当ブログはみている。
📚 参照データ・出典
- 総務省統計局『2025年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)7月分』(2026年8月21日)|総務省公式PDF(一次資料)
- 日本銀行『企業物価指数(2026年7月速報)』(2026年8月13日)|日銀公式PDF
- ニッセイ基礎研究所『企業物価指数2026年7月~国内企業物価は非鉄金属などが押し上げ、前年比上昇率は高止まり~』|記事リンク
- 帝国データバンク『倒産集計 2026年7月報』(2026年8月10日)|記事リンク
- 帝国データバンク『「物価高倒産」の動向(2026年上半期)』(2026年7月7日)|記事リンク
- 外為どっとコム マネ育チャンネル『ドル円午前の為替予想』(2026年8月21日)|記事リンク
- みんかぶFX/為替『これからの見通し:ドル相場を主軸に神経質な動きを想定』(2026年8月21日)|記事リンク
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